上京区では、1200年以上の歴史を持つ地域の文化と魅力を広く知ってもらうため、平成23年度から上京区内でまち歩き等の催しが開催されています。今年は、歴史資料館特別展「内裏図の世界-京都御所と公家町-」にちなみ、古地図をもとに京都御苑の歴史を紐解く講演「古地図で歩く京都御苑(5/14)」とフィールドワーク「古地図で歩く京都御苑(5/21)」が行われました。
「内裏図」は、江戸時代の禁裏御所(京都御所)とその周辺の公家町を描いた古地図。京都御苑の300年前から江戸時代末までの古い姿を知ることができます。
江戸時代200年の間に内裏図に描かれた京都御所とその周辺は大きな変化をしています。その変化を内裏図という古地図を材料にフィールドワークを行うというおもしろい取組。
2016年5月21日(土)、午前10時30分~と午後1時30分~各90分開催されました。私はフィールドワーク午後の部に参加させていただきました。
共に講師は伊東宗裕先生(元歴史資料館職員)。
定員が各回20名と限られているため約3倍の倍率で抽選が行われたそう。それでも京都御苑は車の通りが無いうえ広いので、通常のまちあるきイベントよりも多い人数を受け入れることができたそうです。
お恥ずかしながら私は東西南北があまり得意ではない「地図の読めない女」です。その上、まち歩きやフィールドワークの参加経験もわずか1回のド素人。なので、伊東先生のそばをキープしながら進みました。今回のレポートは、そんな私が感じた魅力をお伝えするものです。歴史的な観点は改めてカミングで取材させていただくことになっておりますのでご期待ください。
5月の京都御所は新緑豊かでとても気持ちの良い開催となりました。しかしながら、日差しがきつく、暑い!「日陰中心に回っていきましょう。」との、先生の温かいご配慮が嬉しかったです。
閑院宮址→九条家址→東本願寺が寄進した灯篭の台座址→貽範碑(いはんひ)→凝華洞址(ぎょうかどうし)→白雲神社→蛤御門→猿ヶ辻→近衛家址→一条家址、と大変盛りだくさんな内容で約2キロの道のりを歩きました!
小話もはさみながら進んでいきます。
管轄が環境省(環境庁)の前の厚生省時代のものということがわかります。御所だと宮内庁の「宮」のマンホールになります。足元にも発見があり、心をぐっとつかまれました。
「御所の中に神社があるのが不思議ですよね?」これは、五摂家のひとつ、九条家址にて先生のお言葉。京都御苑内には厳島(いつくしま)神社、宗像(むなかた)神社、白雲(しらくも)神社、三つの神社があります。もともとは公家の邸宅内にあったものが、広大だった邸宅が壊された後に露出したものだそう。おそらく当時も、人々が参詣していたのでしょう。
さらに進むと、大きな石碑が。少し小高い場所にある石碑まで登ります。
いつの時代にも政治を期待される方はおられたそうで、その一人である朝彦親王(1824~91)の没後に遺徳をしのび、御遺族により貽範碑(いはんひ)は、たてられたそうです。貽範碑には、先生にとっても呪文のような石文が書かれている…と冗談を交えながら私たちにもわかりやすく説明してくださいました。
「是非今から半年後にきてください。」
貽範碑から望む景色はとても美しく、秋には地面が紅葉で真っ赤にそまるそうです。伊東先生オススメのスポットですので、是非みなさまも足を運んでみてはいかがでしょうか。
有名な蛤御門(はまぐりごもん)。私も知っている場所が出て来て安心感からか、さらに興味津々。古地図にも同じ名称で記されています。ですが、現在と位置が違ったとのことで、その位置を確認します。
当時、門番はわずか2人。今でいうセキュリティは非常に甘かったと感じられますが、当時は京都御所に近づけないようにするための門として機能しておりました。神聖な場所である境界線のような役割だったのでしょう。しかしながら、幕末は違い、禁門の変=蛤御門の変が起きました。
木陰はひんやりして気持ちよく、参加者同士の会話も弾みます。さぁあと一息です!
「あと少し時間があるのでこちらも寄ってみませんか?」
先生の計らいで、明治天皇生誕地の中山家址へ進みます。
中をのぞくと井戸が見えました。諸説ありますが、明治天皇の産湯の水を汲んだといわれています。ですが先生によるとこの井戸は、明治天皇が乳児の時に、水不足が起こり掘られたものだそう。掘るとこんこんと涌き、成人することが難しかった当時、この井戸の水ですくすくお育ちになれたそうです。「さちの井」とも言われています。ちなみに、出産をするために建てられた家も残っていました。
そして、近衛家址、一条家址をめぐりました。
皆様、お疲れ様でした!先生ありがとうございました。
参加された方からは
「普段散歩で訪れている場所なのでもっと知りたくて参加しました。解説いただけて、新しい発見がありました。暑かったですが木陰が気持ちよく、大変有意義でした」「歴史が好きで、当選してびっくりしました!今日は他の参加者希望者を代表してきました。また開催してもらいたいです」など皆さんそれぞれに楽しまれました。
公家と宮の違いさえあいまいだった私の質問に優しく答えてくださった伊東先生。改めて地域の魅力を感じることができるこのような企画が、ユニークな観点から切り取られると楽しさも倍増です。上京区フォトコンテスト「撮っておき上京」でも人気スポットの京都御苑。この日も多くの修学旅行生や外国人観光客が来られており、他のフィールドワークも多数見受けられました。そんな上京区に住んでいることを誇りに感じました。今後、京都御苑の新たな楽しみ方をカミングでもとり上げていければ嬉しいです。
岡元麻有(33)
ギャラリーbe京都館長。1児の母。2016年度カミングの企画運営に携わらせていただいております。兵庫県出身、2007年より上京区在住。色んな切り口でレポートできればと思いますので是非お気軽にお声掛けください。