上京ふれあいネット カミング

便利な世の中の不便解消をお手伝い~新しい生活スタイルを促進!地域をつなぐ「スマホ活用」ふれあい事業~

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2020年、世の中は新型コロナウイルス一色に染まりました。テレビのニュースや情報番組では感染者数や死亡者数、これからの見通しの不明瞭なことばかりが流れて、見ていると悲しくなってきます。京都府では緊急事態宣言が二度出され、不要不急の外出を控えるように呼びかけられています。その中で困るのが、ちょっとしたことを対面でご近所さん、お友だちと話しにくくなってしまったことです。ちょっとしたことなので、わざわざ電話を掛けるほどでもありません。若者はSNSやオンライン会議システムを活用するので、それほど不便は感じていないかもしれませんが、そんな便利なツールを使わない高齢者の方々は、本当にじっと耐えていらっしゃるのではないでしょうか。高齢者の方々は、井戸端会議がストレス解消法であり健康の秘訣です。それが積極的に出来ないとなると、心身共に苦しくなってきてしまいます。

上京区では、<新しい生活スタイルを促進!地域をつなぐ「スマホ活用」ふれあい事業(以下、スマホ教室)>を7月からスタートしました。これは、①三密を避けた地域活動、②地域ぐるみで防災・防犯、③外出が減った高齢者の心身の健康をサポートする目的で、手持ちのスマホでいつでも簡単にコミュニケーションがとれるよう、京都市が包括連携協定を締結しているスマートフォンアプリ「LINE」の基礎的な機能を学び使いこなせるようにする講座です。

高齢者の方がスマホをお持ちなのか、という疑問もありましたが、意外とお持ちであることが分かってきました。ガラケーのサポートが徐々に終わるというお知らせが郵送され、ちょうど高齢者の方がガラケーからスマホに変更されているようなのです。しかし、高齢者の方がスマホをお持ちだからと言って、使いこなせているかは別です。以下、スマホ教室を実施する中で見えてきた参加者の方の実情とスマホ教室の様子をご紹介します。

<自分が持っているスマホの種類が分からない>

スマホ教室の開催前に、参加者には事前にアンケートに答えていただきます。持っているスマホの種類(iPhone、Android、持っていない)、スマホでよく使う機能(電話、メール、写真、インターネット検索、LINE、QRコードの読み込み、動画、ニュース、ゲーム、その他)、LINEアプリがスマホに入っているかどうか、アプリを自分でダウンロードしたことがあるかどうか等についてです。この結果から、教室で使用する備品の準備、スマホ教室の内容(LINEアプリのダウンロードからはじめるかどうか等)の目星をつけています。
ここでまず、「自分が持っているスマホの種類が分からない」問題が発生しました。iPhoneとAndroidの読み方もわからないし、言われたところで自分が何を持っているか気にしたことがないのだそうです。これは衝撃でした。そこでアンケート欄に「スマホだが種類はわからない」を追加しました。そして、スマホ教室の内容に「スマホとガラケーの違い」、「iPhoneとAndroid」の見分け方を盛り込み、教室の中でご自分のスマホがどちらかを確認いただくようにしています。傾向として高齢者の方は8割以上がAndroidを使用されているようです。


スマホ教室の資料の一例

<アプリが動かない、いうことを聞かない>

次に、LINEアプリの操作の練習をする際に「アプリを開いてみましょう」というと、アプリを触る手つきが心もとないことに気づきます。アプリが動かない、いうことをきかない問題です(実は、LINEアプリのダウンロード、アカウントの取得でも色々と大変なエピソードがあるのですが割愛します)。
どうやら手が乾燥すると指先の静電気発生が抑えられるのか、高齢者の場合タッチパネルの反応がすこぶる良くないことが多いです。そこで「タッチペン」を準備し操作する際にお貸しすることにしました。スマホ教室のスタッフも基本的にタッチペンを使用するので感染症対策にもなります。さらに教室の進行に沿って操作を促すと、タッチパネルを「タップ」、「スワイプ」、「ピンチアウト」、「ピンチイン」、アプリを「ダブルクリック」、「ロングタップ」等の操作をこれまで意識してされてこなかった、そういう触り方をしたことがないということが判ってきました。ですので、地図アプリ等を活用して、タッチパネルの触り方の練習もすることになりました。


タッチペンを使用してスマホを操作する参加者

<LINEは見るのが専門>

ここまで教室の様子をお伝えすると、参加者のほとんどがLINEを使ったことがないと思われるかもしれませんが、実は、参加者の多くがLINEはスマホに入っていて「LINEを使用したことがある」方が7割以上なのです。もちろん、LINEを使いこなし家族やお友だちとスタンプや写真を送り合っている方もいらっしゃいますが、多くの方が「LINEは見るのが専門」とおっしゃいます。
お話をよくよく聞いてみると、
・間違って変なところを触ってえらいことになるのがこわい
・子どもによけいな所を触るなと言われている
・子どもや孫に使い方を一度聞いてもわからないし、忘れて何度も聞くから教えてもらえない
などの背景が見えてきました。さらに、お子さんやお孫さんがLINEの設定を変更されていて、友だち追加やグループに参加することさえもできなくなっていらっしゃる方もありました。私も身に覚えがあるのですが、家族に使い方を聞かれると、ついついぞんざいな対応をしがちです。どうせ教えてもわからないし、何度も質問しないで、と思ってしまうのはよくあることでしょう。
結局、家族から一方的に送られてくるメッセージと写真を「見るのが専門」で、返信したり、写真を返したりしたことがない状態が継続されるのです。


スクリーンで画面の説明をする講師(レポーター本人)

<何が分からないか分からない>

スマホ教室を開始した当初、「質問はありますか?」とお聞きしてもほとんど質問は出ませんでした。教室後のアンケートには「何が分からないか分からない」から、質問ができないという感想が書かれていました。教室を主催する側としては分からないことに対応したいのですが、非常に困惑しました。
スマホ教室は講師と、参加者の人数に対応した学生等のスタッフ(参加者1~3人に対して1人のスタッフ)のチームで行います。講師は全体の進み具合を見るので、個別の参加者の様子まではカバーしきれません。そこで、学生等スタッフに教室後振り返りを行ってもらい、講師、学生等スタッフ、事務局で共有することにしました。スタッフは参加者がお持ちのスマホの様子(操作が難解だった、機種が古くて反応が悪かった等)から、参加者が何に困っているのかをよく観察してくれて、振り返りで教えてくれます。因みに、振り返りはLINEノートで送ってもらっています。その中で浮かび上がってきたのは、スマホを供給する側の「想定する感覚」と高齢者の「感覚」には大きなギャップがあるということでした。近年、スマホの購入時に紙の説明書がついてこないことが多く、あったとしてもスマホの機械部分の説明であり、操作の基本の説明書ではありません。理由は、スマホというものは「直感的に触る」もので、分からなければググる(検索する)から紙の説明書が必要ないのです。教室を主催する側も、若者ほどではありませんが、分からなければググる感覚に近いです。ですので、高齢者が何に困っているのか想像がつきませんでした。
高齢者にするとタッチパネルを触ること自体の感覚に慣れていない、スマホで何ができるのか分からない、だからアプリと言われてもそれが何なのかが分からない、電話の機能があれば何も問題ないではか、LINEの操作というが、アプリを開いても画面を行ったり来たりできない、文字の入力は非常に困難だ等、分からないことだらけなのです。

<高齢者だってスマホを使えるようになりたい>

高齢者の方がスマホ操作に非常に戸惑っていらっしゃることはご理解いただけたと思います。しかし、だからと言って諦めていらっしゃるわけではなく、むしろできるならば使えるようになりたい、と強く思っていらっしゃることもよく伝わってきました。まず、複数回開催しているグループの場合、グループの出席率は非常に高く、毎回初めて参加される方がおられます。また、スマホをお持ちじゃない方も参加できるよう、主催側からタブレットをお貸しする旨をお伝えしているので、お持ちじゃない方も毎回参加されています。練習後、不安が少しほぐれたのかスマホを購入される方もいらっしゃいましたし、ご自分のお持ちのスマホが古い機種で、練習をして使い勝手が悪いと思い新しい機種に変えられた方もいらっしゃいました。それだけでも意欲を感じます。
さらに、事後アンケートを見るとスタッフの対応に対して、
・丁寧に教えてくれる
・何度聞いても怒られない
・みんなと一緒に練習して楽しい
・1対1で教えてくれるので助かる
と高く評価をしています。一方で、また教えてほしい、何度も聞きたい、1度聞いたぐらいでは覚えられない、といった感想もあるので、反復練習が必要であることもわかります。


学生スタッフが操作を説明しているところ

ある参加団体のグループLINEから個人情報を消した画面

上記のグループラインは、これまでご紹介したグループの方々がやり取りをされているところから、個人情報を消している画像です。連絡事項を参加者に伝え、スタンプを使い、絵文字も使われるようになりました。今ではグループLINE内で連絡等やり取りを頻繁にされており、初めてのLINEからの上達ぶりに感動を覚えます。

<便利な世の中だからこそ不便がある>

世の中はますますデジタル化へ加速していきます。行政手続きもデジタルが推進されています。スマホでなんでも出来るようになることは、一定の世代にとっては非常に望まれていることですが、高齢者にとっては困難な面も多く、取り残された感覚になるかもしれません。
スマホ教室を開催して感じるのは、高齢者には寄り添いが必要ということです。一足飛びに使えるようにならないからこそ、寄り添いが必要であり、その中で確実に進歩があるのです。高齢者のペースに寄り添うことは高齢者の心身の健康をサポートすることにもつながります。スマホ教室はおそらく今後もニーズがあるでしょう。しかし、何につけても行政ができることには限りがあります。願わくば、地域の中に高齢者のスマホ操作について寄り添える機会が増え、皆で学び合える機会、関係性が構築されればと思います。

レポーター

松井朋子(まつい ともこ) 京都市まちづくりアドバイザー

スマホ教室では、講師4人で担当の調整をしています。私もまちアドの仕事外で講師の一人として教室に関わっています。参加者はみな熱心で、本当に頭が下がります。学生スタッフ等のみなさんはとても親切で、講師のサポートもバッチリで本当に感謝です。

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