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「捨てられるはずのものの活用」-社会循環型の‘もったいない’

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上京区は文化と歴史が香り、伝統の中にも新しい価値が生みだされているまちです。そんな上京区には、興味深い取組を行う手作り靴工房「吉靴房(きっかぼう)」があります。
製靴家(せいくつか)の野島孝介さんにお話を伺いました。

今回取材をさせていただくきっかけとなったのは、「上京区の新しいまちづくりを生み出す場、上京!MOW(令和2年10月開催)」での出会いでした。感染症予防として、Zoomで開催されたので、野島さんとの出会いはオンライン上。40名以上の方が参加され、この指とまれ(テーマを募集し、話したいテーマに参加者を募る)形式で面白いアイデア、提案があがりました。

その内のひとつ、「捨てられるはずのものの活用」を提案されていたのが野島さん。レポーターの私は参加者の一人としてとても興味を持った、というわけです。

「ある業種ではゴミとして捨てられるものが、ほかの業種では活用できるものがあるかもしれない。使えるんじゃないかというのを集めることで地域にどんな産業があるのかを理解し、様々な交流が生まれるのでは」という視点にたったものです。

なぜ野島さんがこのテーマを出され、どういった取組をされているのか、お話を伺いました。

使い切ることを考えていたー。

靴づくりで日々手にする革。もちろんつくり手やデザイナーによって考え方が違うので、一概には言えませんが、野島さんは、革には捨てる部分がほとんどなく、活かせるのであれば活かしたいとずっと考えてこられました。例えば、ランプシェイドにしてみたり、オブジェをつくったり、店内にもたくさんの革から生まれた靴以外のものが飾られています。

ある時、大阪にある仏師の工房に行きました。
そこでは、日本の風土に合わせ、大切に乾燥させた良質な素材から仏師が掘り出していく、仏像とともに生まれる木片がありました。

野島さんはその木片を「美しい」と感じました。

聞くと、その木片はゴミになるというのです。ヒノキ、楠など、上質な素材を生かすことができないだろうか、と考え持ち帰ることにしました。ヒノキには防虫、消臭、抗菌効果、香りには気持ちを落ち着かせる効果があるともいわれています。麻の小袋にいれて、活用することにしました。

またある時、畳屋さんにイ草の断面は竹炭の構造に似てて、簡易の空気清浄機のような効果があると聞き、門松の廃材を利用し飾れるようにしました。

このように、ある業種ではゴミとして捨てられるものが、ほかの業種では活用できるのです。

モノ作りが貢献できることがあればー。

こういった端材を活かしたものを販売することもできるが、おかげさまでお仕事の方の注文が絶えず、忙しくされています。
むしろ、これらを販売して利益をあげるというよりは、もっと社会に還元するような仕組みで活用の幅を広げていきたいと考えておられます。

「何かに使えるのではないか、というものを集めることで地域にどんな産業があるのか理解し様々な交流が生まれるのではと考えています。
日本人は、もったいない精神、地域協力、ものを無駄にすることはあまりしない国民性だと思います。ですが、高度成長の中で大量生産、大量消費、大量廃棄をしてきました。経済の恩恵も受けたけど、例えばポイ捨てをするなど個人の責任感は残念ながら変わってしまいました。
つまり、想像力を持たない方が増えてしまったと思うのです。ポイ捨てをするとそのあとどうなってしまうのか、ものがどうやって生まれたか、そんな想像する力を幼い頃から養っていくことが大切だと思います。興味をもって自分でつくる、責任感を強く持ち、世の中を読み解く力を町全体で育てていきたいです。そんな中で、自分が得意とするモノ作りが貢献できることがあれば・・・と思います。」

と熱い思いを伺いました。

なるほど野島さんの工房も趣のある京町家。
2階はショールームになっています。靴の型が描かれていたり、蝶番が革でできていたり、発見するのが楽しいほどです。

きっと野島さんと同じように、素材を活かしたいと考えている声が他にもあるのではないでしょうか。
プロが扱うものは質が良いものが多いので、端材を通じてそれらを知るチャンスでもあります。
ですが、端材を使うことは、結果的にコストがかかってしまうこともあります。
いろんな角度から物事をとらえ、必要としている方にうまく届き、良質な素材がうまく循環し、知識と理解、さらには交流を深めたいと感じる有意義な取材となりました。

レポーター紹介

岡元麻有

取材の中で、「捨てられるものの活用は、発酵食品のように偶然生まれるかもしれませんね」といったお言葉も印象的でした。
平成28年度の上京区民まちづくり活動支援事業で、「伝統にアイデアを―クラフトミックス京都」を取り組ませていただきました。
http://mix.be-kyoto.jp/
上京区はそんなアイデアが生きるまちだと思います。このご縁を大切に、社会循環型のモデルとなれば楽しいですね!

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