「上京!MOW」から見える、上京の未来

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1.平成28年度上京区まちづくり円卓会議の取組

(1)上京!MOWとは

上京区総合庁舎にて,平成28年11月19日(土)と平成29年2月27日(月)に上京区まちづくり円卓会議拡大会議上京!MOW(※以下、「上京!MOW」と表記)の第1回、第2回が開催されました。

上京区まちづくり円卓会議(※以下「円卓会議」と表記)とは、上京区基本計画(地域の課題を区民と行政機関との協働で解決し住みよいまちをつくるための計画)を推進するための意見交換を行う場で、上京区内17学区からの代表者、NPO、公募委員等で構成されています。
「上京!」は新しいまちづくりを生み出す場の、「MOW」はM:まち、O:お宝、W:輪・和という思いが込められています。
上京!MOWは円卓会議で話された内容について、円卓会議内だけでは出にくいような情報を得られ、さらに円卓会議内外の多くの人が関わっていく、そんなプロセスを踏んだ「拡大会議」に位置づけられています。

(2)第1回及び第2回の円卓会議で提案されたテーマ~上京!MOWに先行して~

上京!MOWの前には,2回の円卓会議(平成28年度第1回、第2回)を開催しました。その会議で出た、委員の方々が深く話し合いたい内容は次の9テーマでした。

●外から住む人と地域が交わる・なじむ(上京を知る機会、受入れ体制)

(1) 学生を地域に溶け込ませるきっかけづくり
(2) (留)学生との地域交流

●多世代が出会う場所:各世代がそれぞれに応じた地域での役割、決まった場所やイベントでの交流の場

(3) 健康づくりと地域活性
(4) 多世代を遊びでつなげたい!
(5) 学区を越(超)える
(6) 多世代が発揮できる場所をつくる、手伝う
(7) 伝統産業を子どもたちにつなぐ

●大切にしたい場所・伝統文化:お寺、神社、京都御苑ほか隠れた資源、伝統文化、年中行事、商店街、空家、町家、空きビル

(8)上京は世界遺産
(9)空家問題

第1回上京!MOWでは数多くある上京のまちづくりにかかわる団体を知り、上京区内の課題解決につながる関係性づくりを行うため、24団体のプレゼンで構成した上京!collectionを第一部とし、プレゼン内容に関連するようなテーマについて参加者同士が話し合い交流できる場である上京!meet upを第二部で開催しました。
さらに、第2回上京!MOWでは、地域住民で地域活動に参加する一方、NPO活動や仕事などでまちづくりにかかわる三者から鼎談方式で話題提供いただき、参加者全員で地域(上京、学区)の10年先の未来を一緒に考える場である上京!meet upを開催しました。

2.知るきっかけづくりだった第1回上京!MOW

第1回上京!MOWは平成28年11月19日(土)の13時~18時開催という長丁場でした。会場は上京区総合庁舎の4階にある会議室の壁を取り払った開放感あふれる空間でした。初めての開催でも参加者一人一人が楽しんでいただけるように、どんな人が参加されているか一目でわかるアンケート(写真参照)や、参加者各自がおススメしたい場所の情報を付箋で貼る上京MAPが壁面に掛けられ、それらの前は人垣ができていました。また参加団体等のチラシ、パンフ、上京に関する情報を知ることができるフリーペーパーコーナー(只本屋さんにご協力いただいたセレクト)、上京のことがちょっとわかる文庫スペース、「上京史蹟と文化」のバックナンバー、ふれあいネットカミングの記事紹介等をスライドで紹介するなど情報コーナーも充実していました。休憩がてら参加者にはチラシやフリーペーパーをご覧いただけたようです。

上京区は、京都市内の行政区において面積では下京区に次いで狭く、人口は東山区、下京区について少ないにもかかわらず、まちづくり活動にかかわる団体、事業所は非常に多く、活動する分野が違うと出会う機会が少ないという課題があります。また、地域住民の活動とそういった団体、事業所が出会う機会も少なく、お互いに不安感をもっていることも課題でした。中谷香上京区長のオープニングプレゼンでも話されていましたが、個々のまちづくり活動は点であり、それらを線へ、そして面へとつないでいくことが上京!MOWの目的でもあります。そこで、まちづくり活動にかかわる団体、事業所、学区にお声掛けしそれぞれの名称や活動する方の顔、活動内容の一端を知ってもらうきっかけとして、第一部上京!collectionでは24団体がプレゼンを行いました。

プレゼンはA~Eの各スペースで5団体ずつが同時に発表をしました。7分という非常に短い発表時間で要領よくまとめていただき、円卓会議で話し合いたいテーマに関係する団体が多かったためか、参加者からは熱心に質問も出されました。

プレゼンを行った団体は下記の通りです。

<上京!collection発表団体>

A-1 同志社大学ボランティア支援室学生スタッフARCO
A-2 地域防災サークル同志社FAST
A-3 西陣はらぺこマルシェ(地域をつなぐ西陣の朝市マルシェ支援事業)
A-4 上京ふれあいネット「カミング」
A-5 ASUVID今出川(同志社大学ボランティアサークル)
B-1 御所藤袴の会(藤袴アベニューてらまち)
B-2 滋野団体連合会(きょうと留学生寮オリエンテーションセンターさつき寮との交流)
B-3 外国人女性の会パルヨン
B-4 親子でハッピーミュージック実行委員会
B-5 「能舞台フェスタin今宮神社御旅所」実行委員会
C-1 京楽ラクプロジェクト(ユニバーサルデザイン)
C-2 ジョイ健活(フレイル予防について)
C-3 元真如堂町健康福祉と防災のまちづくりを考える会(健康福祉と防災についてのアンケート実施)
C-4 出水学区自主防災会(夜間避難訓練について)
C-5 千本商店街朱雀大路の街(100円商店街、他)
D-1 NPO京・ものづくり塾和らいふ(歴史と文化を踏まえた和装産業文化体験型催しについて)
D-2 想いのしおり(伝統産業職人さんの想いを届けるフリーペーパー)
D-3 千ブラ(ちょっと昭和なまちあるき)
D-4 art space co-jin(障害のある方のためのギャラリー兼交流の場)
E-1 応用芸術研究所(学生×多地域連携活動)
E-2 385PLACE(シェアオフィス・コワーキングスペース)
E-3 ひつじがのぞいた銭湯(上京区の愛しき銭湯たち)
E-4 堀川団地住まい手有志+京都府住宅供給公社(堀川団地のいま 地域のいま)
E-5 上京クリエーティブネットワーク(上京OPEN WEEK)

また,上京区民まちづくり活動支援事業の採択団体の一つである上京クリエーティブネットワークが11月11日~20日に開催した上京オープンウィーク(以下、上京OW(http://www.kamigyo-creative.net/))と連動することで、期間中に団体や事業所が行うイベントへの参加や場所へ訪問できる機会がもてました。また、上京OWに興味を持つ人々が上京!MOWにも参加するという双方向のPRも行えました。地域活動を行う住民さんたちと、NPO等まちづくり活動を行う人々や事業所がお互いを知るきっかけとなったのです。
第二部上京!meet upでは、11名の参加者から話したいテーマを出していただき、残りの参加者の方々はそれぞれが話したいと思うテーマのグループへ参加する方式でした。

<話したいテーマ>

①ものづくりや職人さんの発信
②自主防災活動地域団体の連携
③災害の想定から復興まちづくり
④上京まちの魅力はこうして発信:経済効果も忘れずに
⑤次世代下宿「京都ソリデール」シニア宅に大学生が下宿ゆるやかな見守り社会
⑥千ブラ:企画の進め方切り口 ※千ブラ(京都西陣、千本通のぶらぶらまち歩きのこと。)
⑦AIR(アーティスト・イン・レジデンス) ※AIR(宿泊施設に芸術家を一定期間招き入れ、滞在中の活動を支援する事業。)
⑧地域住民がどうすれば元気になるか
⑨子どもと大人の遊び場
⑩上京を面白くするMAP
⑪上京区内の高い建物について

テーマを出された方は参加者から活動に関する意見を聞いたり情報を得たりした一方、テーブルに参加された方々も、自身の活動のヒントにされたり、何か一緒にできることはないかと次の展開の話をしたりと交流がお互いの刺激になったようです。

第1回上京!MOWには第1部、第2部のべ124名(スタッフ除く)の方が参加されました。参加者の傾向としては、意外と20代、30代が最も多く、次いで、40代が多いという、全体的に若い層が多かったようです。プレゼン発表に学生団体が5団体参加したからかもしれません。また、上京区内在住、上京区内で活動されている方が非常に多かったのも特徴的でした。

参加された方からは、

● 自分も何か始めようと思った。
● 楽しかった!来年もやりたい(プレゼン側)。
● 面白い活動をされている人や場所を知れてよかった。
● プレゼンの時間が短かった。
● 何か連携がはかれれば。
● 聞きたいテーマが多すぎて困った。
● 上京区で活動する団体の数の多さ、ジャンルの豊富さに改めて驚いています。
● 新しい考え方をもらった。

といった感想がありました。

3.一緒に未来を視る場であった第2回上京!MOW

第2回上京!MOWは平成29年2月27日(月)18時30分~21時に第1回と同じく上京区総合庁舎の4階会議室を会場としました。参加者は48名で、第1回、第2回とも参加した方は、参加者48名中30名でした。
開催日時の関係もあるのでしょうが、第2回の参加者傾向は30代~70代がバランスよい一方、20代が少なかったです。男女比は、男性:女性=2:1で男性が多かったです。上京区内在住、上京区内で働く、上京区内で地域活動中の何等か上京に関わる方が大半でした。

松本修一さん(春日学区住民福祉協議会会長、まちあるきガイド)
石崎立矢さん(正親小学校PTA前会長、千ブラ企画、まちあるきガイド)
冨家裕久さん(NPO法人京町家なんでも応援団団長、翔鸞小学校PTA会長、まちあるきガイド)
の御三方で、筋書をつくらず出たとこ勝負で話しをする鼎談が、第2回上京!MOWの前半でした。地域住民としての活動のほか、三名がそれぞれNPO、仕事等でまちづくりに関わる活動をされていらっしゃることから、地域活動の視点、外からの視点の双方向に明るいということが共通であるほか、それぞれまちあるきガイドをされるという共通項があります。

せっかくの話が流れてしまうのがもったいないので、話の内容を書き留めるべくグラフィッカーとして、タオルマンこと肥後祐亮さん(NPO法人グローカル人材開発センター)に鼎談やその後の交流会の発表記録等をお願いしました。

鼎談では,まちあるきガイドという御三方の共通項であっても、その想いは個々に異なっており、お仕事の関わりで地域のことを知らないといけない、地域の人にもっと伝えたい、町家のある街並みの良さを知ってほしいなどそれぞれの想いをもったまちあるき活動をされていることがわかりました。
石崎さん、冨家さんがPTA会長の経験者であり、松本さんが春日学区で平成30年度に開校する御所東小学校のPTA開設準備をされているということから、PTAに関する話で盛り上がる一方、組織の世代交代、多様性というキーワードから、聞いておられる方も思わず「うんうん」とうなずいておられるなど、熱心に耳を傾けていらっしゃいました。近年は結婚をしない、子育てしない世帯が増え、そういった人たちの地域活動の入口が見えないという問題があります。また、在住外国人や、京都外からの移住者・新規住民、障がい者など多様な方が地域活動にどうかかわるか、今後の大きなテーマとなりそうです。

後半の交流会では、鼎談時に出てきたキーワードから興味があるものを参加者に三つ書き出してもらい、お互いに無言で見せ合ってキーワードが「似ている」「面白そう」等で4人グループになっていただきました。因みに、キーワード書出しの中で突出して多かったのが「世代交代・世代間」等の世代に関するものでした。次に空家・町家、ボランティア、PTA、多様性と続きました。

グループでは気になるキーワードを意識しつつ、ポジティブかつ明るい「10年先の未来」を考えてもらいました。

(1) 10年先の私はどうしているか
(2) 10年先のまち(学区、上京)はどうなっているか?どうなっていてほしいか?

そして、各グループからは、

(3) 10年先が良い状態であるために今から何をすべきか? というアイデアで、

● 人と人がつながるイメージ
● 入りにくいイメージの組織を開放していく
● カフェやお寺などの場が活用されたイベント
● 子育て世代が積極的にかかわる
● 子どもたちにまちの習慣、伝統、風習、しくみをつたえる

などが出ました。

円卓会議議長である同志社大学大学院総合政策科学研究科の新川達郎先生は、円卓会議では各グループの話に耳を傾け総括してくださいます。第2回上京!MOWでは、次のようにまとめてくださいました。
みなの共通の願いは、「住み続けられるまちであってほしい」こと。多様な人が「つながる」→多様な人が「ともにいきる・くらす」→子どもや外からの人、次の世代に「伝える」プロセスが成り立つ。
そしてそのために、「町家、空家、マンションを上手に活用すること」、「多様な人が生きていくための暮らし方づくりの工夫が必要」、「カフェ、銭湯、寺などの場づくり」が手掛かりとなります。伝えるためには、単なる頭のすげ替え、総入替えといった「世代交代」ではなく、今ある組織を良いようにリノベーションする必要があります。本当に良いまちづくりを続けていくための組織を考える必要があるのです。

最後に、参加者が「持っている情報」、「ほしい情報・一緒にやりたいこと」を掲示板に提供してもらいました。この中から、次の展開に動くよう、区役所の方でもマッチング、相談対応を進めていきます。

4.上京!MOWを終えて

平成29年3月17日に第3回円卓会議が開催されました。上京区の基本計画の進捗確認や平成29年度運営方針について報告があり、その中で第1回、第2回のまちづくり円卓会議の流れ、第1回、第2回の上京!MOWの様子を振り返りました。上京!MOWが拡大円卓会議と位置付けられるため、委員の3分の2はどちらか、ないしどちらも参加されていました。そこで上京!MOWの率直な感想を参加されていらっしゃらない委員に話され、当日の様子の説明もしていただきました。そして、第2回上京!MOWでもテーマとなった明るいポジティブな10年先の未来を見据えて、「どのような取組を進めるのが良いか」「どのようなつながりをつくるのがよいか」アイデアをいただきました。
最後に円卓会議議長の新川達郎先生からは、
①情報を共有する(整理、蓄積、更新しつつ):安心安全につながること、暮らし方、地域のルール
②未来のために今の活動を続ける・続ければいつか伝わる:1回、2回さそってダメでも続けていればいつか参加してくれるかもしれない、いつでも参加してくれていいよという状態にする、楽しんでいれば気になってくる人もいる
③ちょっとしたおせっかいを発揮する:人と人、人と団体、団体と団体のような間をちょっとつなげるというおせっかいの「機会」「人」が必要である
といった三つのポイントを挙げていただきました。

二回の上京!MOWという場を通して感じるのは、地域活動をする住民さんも、まちづくり活動をするNPO・事業所も見据える未来は近いものを見ているのではないか、そのための取り組むべき問題意識に大きな差はないのではないか、という点です。ただこれまでにそれぞれが交流する機会がない、ないし交流にハードルが高かったため、なかなかお互いの顔を見ることができなかったように思います。新川先生のお話でもあったように、上京!MOWはそのハードルを下げるちょっとした「おせっかい」の場、機会であり、そこに集う人々みながちょっとした「おせっかい」力を活動の中で発揮すれば、次の展開につながります。10年先の未来というのは、1200年以上の歴史を誇る上京ではわずかな時間です。であれば、たった10年先の未来のために続けることはある意味必然なのです。ちょっとした「おせっかい」がらせん状に渦を巻いてひろがり、10年先に何百倍にも広がれば、「絆で織りなす住みよいまち上京」が十重二十重に織りなした上京になっているという非常に明るい未来が見えるのです。

レポーター

松井朋子(京都市まちづくりアドバイザー上京区担当)

まちアドとして上京!MOWの企画・運営・進行に携わりました。構想含め約1年間上京!MOWの準備を行い、ディテールなど凝りすぎて第1回の上京!MOW後に若干燃え尽きそうでしたが、2回目目指して復活。無事2回目も終えることができました。次年度の上京!MOWに思いをはせています。

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