歴史シンポジウム「洛中洛外図屏風に見る乱後の東陣」
       ~上京を新たな視点で学ぶ・楽しむ~

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2017年2月26日(日)に上京区役所で新春特別歴史シンポジウム第2弾、応仁の乱―勃発550年―「洛中洛外図屏風に見る乱後の東陣」が開催され、昨年2月に開かれた歴史シンポジウム「応仁の乱―今輝け、東陣を訊ねて-」に続く大盛況となりました。


▲ 新春特別歴史シンポジウム第2弾の様子

▲ 昨年に続き、大盛況となった会場

シンポジウムでは京都市考古資料館副館長、山本雅和氏による「洛中洛外図にみる上京」の講演が行われました。「洛中洛外図」とは、京都の名所の景観や人々の生活を描いた屏風絵のことです。応仁の乱後の京都を考える上で欠かすことのできない歴史的絵画資料で、美術作品としても高い価値を持っています。


洛中洛外図に先行する絵画に、名所風俗画、扇面画などがあります。そこには、祗園会の山鉾巡行や羽根突きをして楽しむ人々などがいきいきと描かれています。これらの作品で現存するものは数少ないですが、当時の人々の暮らしを知るための大きな手がかりとなる絵画資料です。


▲ 扇面画。当時の様子がいきいきと描かれている

洛中洛外図が描かれ始めたのは、戦国時代です。歴博甲本(1530頃)、東博模本(1540頃)、上杉本(1563年)、歴博乙本(1580頃)の4点を「初期洛中洛外図」といい、なかでも、織田信長が上杉謙信に贈った狩野永徳作の上杉本は有名です。上杉本は、洛中洛外図のなかで、そこに描かれた「人」の数が一番多いといわれています。それだけに、当時の人々の生活を様々にうかがうことのできる貴重な資料です。

この初期洛中洛外図の特徴は、上京を東から眺める隻と、下京を西から眺める隻から構成されていることにあります。また、遠景からは金閣寺を見つけることができますが、これは名所風俗画、扇面画の「名所を描く」という特徴を受け継いでいると考えられています。


▲ 洛中洛外図に描かれる御霊会

▲ 洛中洛外図に描かれる近衛殿。近衛の「糸桜」は有名である

上京の市街地と北山、西山の景観を描いた上京隻には、「西陣」地域の描写と、上御霊社、近衛殿、室町殿をはじめとする「東陣」地域の描写が存在します。洛中洛外図の描写と、現在の様子を対比させた資料は、大変興味深いものでした。今の町並を洛中洛外図と照らし合わせながらのまち歩きは、京都ならではの楽しみ方といえるのではないでしょうか。


▲ 洛中洛外図に描かれる相国寺

▲ 現在の相国寺

講演で引用された瑞渓周鳳(相国寺の禅僧)の「塔上晩望」と題する詩には、相国寺の七重塔から町を見下ろすと、人々の声や、鈴の音が湧き上がってくるように聞こえるとあります。

「塔上晩望」 瑞渓周鳳
七級浮図洛北東
登臨縹渺歩晴空
相輪一半斜陽影
人語鈴声湧晩風

絵画で音を描写することはできませんが、洛中洛外図を見ながら、当時の人々の声に耳を澄まし、心を澄ましてみましょう。洛中洛外図の世界を、より身近なものとして体感できるかもしれません。

質疑応答の時間には、「実際にいろいろな洛中洛外図を見るにはどうしたらよいか」、「講演中に紹介のあった遺跡にはどのように行けばよいか」など、今回の講演を機に、さらに見聞を深めようという熱心な方々からの質問が多数寄せられました。会場からは、驚きや納得の声が何度も上がり、参加者の方々の歴史や地域への関心の深さが伝わってきました。

応仁の乱勃発後、550年を迎えた2017年。今回、シンポジウムに参加することで、新たな視点から絵画を楽しみ、歴史に触れ、地域に親しむことができました。遠い時代に思いを馳せながら、今、私たちが生活する地域について学ぶこと、それは、私たちの日常をより豊かで、味わい深いものにしてくれることでしょう。


▲東陣プロジェクト「語り部と歩く1200年 連続講座」

レポーター

井上 舞香(いのうえ まいか)

同志社大学在学中。 ボランティア支援室学生スタッフARCOのメンバーとして活動しています。 寺社仏閣を巡るのが休日の楽しみです。 京都のまちを歩いて、歴史や文化を堪能しています。

また、もう一人のレポーター、同志社大学生、長岡孝治さんのミニレポートもご紹介します。


受付開始の30分前から、講演会場である上京区総合庁舎にはすでにたくさんの人が詰めかけていて、昨年の第1弾の講演がいかに大盛況であったか、さらには、みなさんが自分の住んでいる地域にどれだけ関心を持っているのかが伝わってきました。


また、受付の向かい側では、同志社大学の学生が東陣にちなんで、上京区の特産品を用いて開発した「東陣のこい人サンド」の試食もでき、講演が始まる前から楽しめました。

いざ講演が始まると、山本副館長のわかりやすく、なおかつ面白い語りに、誰もが聴き入り、ときには声を出して笑いました。


なかでも、洛中洛外図に描かれた場所と現在の場所を比べたときには、会場のいたるところから「おおー」という声が聞こえてきて、僕も「洛中洛外図を携えて上京の町を歩いてみたい」と思うほど、引き込まれる講演でした。

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