新型コロナウイルス感染症の拡大が続く中、スポーツ選手や著名人などから、届けられた心のこもったエールにどれほど勇気づけられ励まされたことでしょうか。
6月から同志社大学ボランティア支援室の学生スタッフ(ARCO)と中立・待賢学区の高齢者の間で、手紙のやりとりや交換ノートで、エール交換をされています。これは、コロナ禍で孤立しがちな立場の人同士で、お互いに励まし合う(エール交換)という新しい生活スタイルにできないだろうか、というアイデアから始まりました。
高齢者が感染を恐れて外にあまり出歩かなくなっていることは知っていましたが、実は学生も新学期が始まってまもなくは大学での授業もなく、バイトやサークル活動などの課外活動もなくなって、一人きりでアパートでこもっているんだよ、と言うことを聞き、「これって高齢者と同じ状況じゃないかっ!」と驚きました。
そこで、高齢者が家に閉じこもっていても、その得意なことを活かし、学生さんを応援してもらおうと中立・待賢学区の高齢者に呼びかけました。しかし、予想に反して、文通世代だと勝手に思っていた高齢者側から、「あまり手紙は書いたことがない」、「文通なんてしたことがない」、「字が上手くない」など思った以上に躊躇されているご様子でした。それでも、ペンネームとプロフィールを添えて学生さんたちの窮地をお伝えしたところ、「それだったら…」と、60~80歳代の地域の方11名にペンネームとプロフィールをご提出いただきました!
参加者はお互いに実名を明かさず、ペンネームでやり取りしています。プロフィールには、性別と年齢のほか、好きな事・モノ・場所、それ以外に学生は「普段学んでいること」「将来どんなことがしたいか」「地域の方と話してみたいこと」を、地域の方には「二十歳の頃にしていたこと」をあげていただきました。大学での授業がない学生たちは、大学と郵送でやり取りし、地域の方は民生児童委員さんなどの地域役員さんが配達役としてご協力いただき、双方のパイプ役として上京区役所がやり取りをします。もちろんつなぎ役は手紙やノートの中身は全く関知しません。
さて、いよいよ、文通と交換ノート(交換日記の形式)が始まりました。まずは、学生側から自己紹介も兼ねてスタート。今の生活状況や趣味、大学で学んでいることなどを書いてもらいます。またペンネームとプロフィールしかお互いに知らず、会ったこともない方を想像し、質問も投げてもらいました。高齢者側は、その質問に応じるようにご自身の趣味や二十歳の頃にしていたことなどを書いて、返信します。
あらかじめ、提出された学生と高齢者のプロフィールからマッチングを検討し、趣味や二十歳の頃との共通点がある方同士にしていたこともあってか、手紙やノートの話題には困らなかったようです。
手紙の交換が四往復まわったところで、お互いの感想をアンケートで聞いてみました。感想には、下記のように心温まることが書いてありました。
この時、私は、「(この企画を)やって良かったなぁ」としみじみ思いました。このお互いを思いやる気持ちや優しさ、しかも互いに会ったこともない相手を尊重されている思いが伝わり、「これは奇跡か?!」と思ったのです。コロナ禍で重い気持ちになりがちですが、暖かい気持ちになりました。手紙や文章、文字のチカラは凄いですね!この結果は、最初の予想をはるかに超えました。
学生さんたちも、相手がどんな方かな、返事はまだかなぁ、など書く時だけではなく、日々の生活でふと考えてくれているとの事。そして、「続けたいですか?」の質問には、学生・高齢者とも「続けたい」と回答しました。ここまできたら、いったいどんな内容が書いてあるのか読んでみたくもなりますが…それは、ご本人同士の秘密ですね。
※手紙やノートの配達役をして頂いた民生児童委員さんや地域の役員さんから、京都人らしいアンケートには書かれていなかった心の声を聞いて頂きました。
今後もこの「エール交換レター&ノート」は高齢者と学生を繋ぐ交流として継続される予定です。
そして、いつか感染状況が落ち着いたら、文通相手はどんな人かドキドキの交流会も開いてみたいですね、楽しみです。
清水真弓(しみずまゆみ)
京都市域京都府リハビリテーション支援センター コーディネーター(理学療法士)
京都市上京区で生まれ育つ。リハビリテーションの視点から、地域の人や地域社会そのものがより良く活き活きと生活できるような活動をしています。
今回ご紹介した「エール交換 レター&ノート」の発案者(最初の言い出しっぺ)です‼