京かまぼこ大栄は、西陣を本拠とするかまぼこ作りの老舗です。創業から150年以上にわたり、蒲鉾をはじめとする練製品の製造卸売りをしています。 京かまぼこ大栄の代表取締役である森本英義さんを訪ね、地域密着かつ壮大な「太閤献上プロジェクト」についてお話を伺いました。
2021年夏、森本さんのアイデアによって「太閤献上プロジェクト」が発足しました。
太閤といえば、豊臣秀吉ですね。かつて西陣には、秀吉の建てた聚楽第がありました。
このプロジェクトは、そんな場所で生まれ育った森本さんの地域への想いから始まりました。
「昔のものを再現するのではなく、現代の技術で秀吉公に喜んでもらえるものを作ろうということで、西陣地域で活躍される様々な分野の職人さんたちの技術を集結させることにしました。クラウドファンディングで資金を集め、きらびやかなものが好きだった秀吉にも認めてもらえるに違いない豪華な献上品が出来上がりました。」
献上品の蒲鉾には金粉が散りばめられ、その周りには醤油や酒、唐紙、飾り畳など全13種類もの品々が並びます。
これらの献上品は、疫病退散の願いも込めて、豊臣秀吉が祀られている豊国神社(東山区)へ、9月18日の太閤殿下の命日に奉納されました。
太閤献上プロジェクト発足の背景や想いについて、森本さんはこう語ります。
「実は、昔から豊臣秀吉には親しみがありました。私の名前が英義(ひでよし)で読み方が同じなんです。そして何よりも、このプロジェクトには『地域密着』への想いが非常に強くあります。私が育った頃の聚楽地域には、小学校や商店街の賑わいがありました。しかし、今では人が減ってしまいました。この地域に人を集めることができれば、活性化していくと考えていました。
そして、このコロナ禍の状況がプロジェクトを始めるきっかけのひとつになりました。
コロナ禍で、かまぼこの卸売業、外国人観光客向けの販売も落ち込みました。そこで、小売に目を向けるようになりました。より良い原料で上質なかまぼこを作ろう、それを直接お客様の手に届けようということで、こだわりが全面的に表現されたかまぼこをつくるようになりました。
コロナ禍で良いものを作ってどのように形にして販売しようかと考えていたときに、今こそ地域密着を掲げたプロジェクトを始めようと思いました。そして、秀吉や聚楽第がプロジェクトのキーになることに気付きました。こうして、コロナによって沈んでしまった西陣の職人たちとチームを結成し、太閤献上プロジェクトを起こすことにしました。」
プロジェクト実現のための資金は、クラウドファンディングによって集められました。
クラウドファンディングとは、主にインターネットを通して自分の活動ややりたいことを発信し、想いに共感したり応援したいと思ってくれた人々から資金を募る仕組みです。
「支援者の方々には、献上品をお届けしました。実際に献上品を神社へ奉納する際には、みなさんのお名前を芳名帳に記帳しました。」と森本さんはいいます。
森本さんの想いと職人の技が光る西陣らしい品々は、多くの人を魅了しました。その結果、プロジェクトには約190人からの支援が集まりました。
「西陣地域にはたくさんの職人が集まっていますが、なかなか異業種の職人同士が関わる機会は多くありません。しかし今回は、秀吉という軸があることによって、会ったことのない職人さんとつながることができました。皆さんがこのプロジェクトのコンセプトを面白がってくれて、秀吉と聚楽第のエピソードから、献上品ひとつひとつのイメージが膨らんでいきました。」と森本さんはいいます。
また、更なる展望を語っていただきました。「秀吉という軸から、西陣地域の人々だけでなく、西陣以外の秀吉の関わった地域ともつながることができるのではないかとも思っています。」
「太閤献上プロジェクトを進めるにあたって、聚楽第まちめぐりマップを作成しました。これは、外から人を呼び込むことによってこの地域を活性化させたい、このマップがそのきっかけになれば、という想いで作りました。マップには、聚楽第跡を中心に老舗から比較的新しい店舗まで、様々なお店を掲載しました。このマップを片手に聚楽第周辺をうろうろしてほしい、ここが京都の穴場スポットになれば、と思っています。」
京都市上京区猪熊通中立売下ル猪熊1丁目351番地
TEL:075-441-9225 URL https://kyokamaboko.com/
「太閤献上」プロジェクト動画URL(YouTube):https://www.youtube.com/watch?v=cpUX43J3I_I
小川結衣花
京都に暮らす大学生です。
今回はじめて取材させていただき、これだけ多くの職人さんが集結している西陣はすごい場所なんだなぁと改めて感じました。他所者なりに、これからも地域の魅力を見つけていきたいです。