「チーム上京!」メンバーの自宅ガレージでコーヒーサロンを開いたり、子どもたちと一緒に輪投げやモルックというスポーツに挑戦したり、近所のハロウィンやクリスマスイベントに参加したり。なんだか楽しそうなことをしているチーム上京!の活動に、カミングレポーターとして参加しました。
「コロナ禍でも、身近な地域の人たちとつながり、気軽に外に出て安心して暮らしていきたい」と認知症当事者である安達春雄さんは、京都市長寿すこやかセンターの「おれんじサロン ひと・まち」で思いを打ち明けました。そのことがきっかけとなり、2021年6月、思いを受け止めたセンターの職員(当時)の橋本千恵さんと安達さんのほか、福祉職の人や地域で様々な活動をしている人たち9名が堀川会議室に集まりました。安達さんの思いを聞き、参加者それぞれが持つ情報や経験、興味あることを伝え合ううちに「認知症との関わりから、だれもが安心して暮らせるまちについて考え、自分たちで進めていこう」というみんなの気持ちが合わさってチーム上京!が生まれました。
まず、レポーターの私が参加したのは2022年1月に開かれた「『自分史・未来史』トーク!」という、これまで歩んできた人生を語り、やりたいことを伝えるイベントでした。この日の語り手は安達さん。本人が時系列に沿って人生を語るのではなく、安達さんの名前「あ」「だ」「ち」「は」「る」「お」で始まる言葉をキーワードに、メンバー同士おしゃべりするような雰囲気で「ア」ルバイトや「だ」っこちゃんという人形にまつわる思い出、「チ」ョコレートなど甘いものが好きなこと、「は」るおさんの名前の由来などを聞き、スポーツマンだった少年時代や仕事に夢中になっていた頃、奥さんやお母さんへの愛が伝わるエピソードを聞きました。
昔のアルバムやスケジュール帳を見せてもらっていた時、安達さんが「字がだんだん書けなくなってきたのが辛い」と寂しそうに言いました。やりたいのにできないのはもどかしい。「そうだ。書く代わりにスマホの音声入力機能を試してみては?」と提案があり、使ってみました。
参加してみて、安達さんの人生に触れて、親しみが湧きました。また、何気なく発した言葉に心を寄せて「できる方法はないかな」と一緒に考えられる仲間がいるのは心強いなあ、と感じました。
続いて参加したのは、3月のまち歩きイベント「ベンチを探せ!西陣ご近所さんぽ」です。
この企画は、歩きづらくなった安達さんの「ベンチがあったらいいな」という声がきっかけでしたが、「外出した先にちょっと腰かけられる場所があれば、足の弱い人や子ども、荷物をたくさん抱えた人も助かるはず」と捉え、堀川商店街周辺に置かれているベンチや、座れそうな場所を探しながら歩きました。「車椅子に乗る体験もしよう」とのメンバーからの提案で車椅子が2台用意され、参加者は車椅子に乗ったり、押したりしながら歩きました。
ベンチのある風景やベンチを置けそうな場所を撮った写真を見て「いつも通っている道なのに気づかなかったことがたくさんあった」「置いてあるベンチに座っていいよという表示があると気軽に腰かけやすい」「子どもだけでまち歩きをして、知らないお店に行ってみたい」など感想を伝え合いました。
チーム上京!の活動はオープンで、和気あいあいとしています。歩きながら活動の良さを尋ねると、「チームみんなが楽しんでいるところが大好き」と橋本さんが言えば、チーム上京!の協力者で「パトラン京都(*)」を主宰する鳥本光照さんも「みんなの特技を持ち寄って、何かやりたいと言ってから実現するまでのスピード感がすごいです」と言い、チームワークの良さが伝わってきました。
病気や障害の有無に関わらずフラットな関係で、同じまちに暮らす人同士のような関わりの中から生まれた一連の活動が認められ、チーム上京!は2021年12月、NHK厚生文化事業団が主催する「第5回認知症とともに生きるまち大賞」を受賞しました。安達さんは「やったー!」と嬉しさを噛みしめた後、表彰式やテレビ放映を通じて実感が湧いてくると「えらいこっちゃ」と受賞の重みを感じたそうです。
「お花見行こう」「動物園行きたい」「ウインドサーフィンもしようね」
チーム上京!のやりたいことは、日頃のやり取りの中から自然に湧き出てきます。
地域の人たちとつながることで、自分も周りも安心して暮らせるまちにするのは、一歩踏みだす気持ちと楽しむ気持ちがあれば意外と簡単に実現するのかも。今後の展開が楽しみです。
チーム上京! Facebook グループページ:
https://www.facebook.com/groups/396129771799451
(*)パトラン京都のカミングレポートはこちら:
http://www.kamigyo.net/public_html/person/dantai/20210127/
亀村佳都 (写真後列右)
京都市まちづくりアドバイザー
悩みや困りごとがあった時、自分で全てを抱え込むことなく、「力になるよ」と差し伸べてくれる手があることに気づき、1人じゃないと感じられるまちは温かくて安心。車椅子体験後、車椅子の人を見かけたら「押しましょうか」と声をかけてみよう、と思いました。