千本寺之内を上がったところにある引接寺(いんじょうじ)は、千本ゑんま堂と呼ばれています。その名の通り、本堂には応仁の乱で焼失した後、1488年に再現された高さ2.4mの閻魔法王坐像が安置され、1637年の洛中絵図には閻魔前町との記載が残る歴史あるお寺です。
千本ゑんま堂で毎年5月5日のこどもの日に行われ、新型コロナウイルス感染症の感染予防のため中止されていた「わらべまつり」が2年ぶりに開催されました。
2005年(平成17年)、境内に童観音(わらべちゃん)が寄進されました。子どもたちの無病息災や学業成就、子孫長久など子どもたちの健やかな成長と幸せを願う童観音が祀られると、戸田妙昭住職は「子ども自身が関わる行事が少なくなっているので、子どもたちが集まって何かできたら」と思い、日頃から千本ゑんま堂の行事を手伝う福井秀彦さんに相談しました。
戸田住職の思いを受けて、福井さんはこどもの日に、子どもたちのあふれるエネルギーを発散させるような場を作ろうと「わらべまつり」を行うようになりました。
今年の5月5日は雲一つない青空が広がる、初夏を感じさせるような天気でした。「ULTRA DANCE MARKET(ウルトラダンスマーケット)」でダンスを習う子どもたち約50名と保護者が集まり、本堂で法要を行い、童観音にお焼香をあげてお詣りしました。
続いて、小学生から高校生までの子どもたちが次々に息のあったダンスを披露。太陽の日差しを浴びながら、元気はつらつと踊る子どもたちは、パフォーマンスを終えると「ちょっと緊張した」「今回が2回目で初めてよりも緊張しなかった」「このメンバーで踊るのは初めてだったので、楽しかった」「間違えたところがあって悔しかった」と口々に言い、みんなでできて、息を合わせてリズムに乗って、ワイワイとやって楽しめるダンスが大好き!とダンスの良さを伝えてくれました。「家からここまで来る途中、こいのぼりの数を数えながら来たよ。3つ見つけたよ」とこどもの日らしいエピソードも聞かれました。
ダンスの後は、アラブ音楽の演奏や、子どもたちが参加するゲームがありました。マンドリンを大きくしたような「ウード」と呼ばれるギターや、「ダルブッカ」「ウドゥ」と呼ばれる太鼓による演奏は異国情緒たっぷり。時に先生と子どもたちのダンスを交えながら、エジプト、トルコ、チュニジアの音楽が奏でられました。
また、7、8人のグループに分かれ、「パンダ」「野球」などを言葉ではなく身振り手振りで伝えることによって、何を指しているかを当てるゲーム等を通じて、子どもたちが互いの名前を覚え、言葉を交わし、あっという間に打ち解けあう姿が見られました。
最後は、「閻魔ダンス」という名の、お祭りのフィナーレを飾るために作られたダンスを全員で踊りました。
わらべまつりを無事に終えて、戸田住職は「久しぶりに子どもたちの賑やかな姿が見られました。子どもたちがイキイキと踊る姿から、大人である私たちも元気をもらえます。こどもの日は、大人も子どもの心に返っていただく1日を過ごして、気の元となる元気をもらい、人生を謳歌できればいいですね。これからも、5月5日のこどもの日は、子どもの目線に合わせて、親子で一緒に過ごす時間となるように催しを続けていきたいです」と、優しい笑顔で語りました。
引接寺(いんじょうじ)千本ゑんま堂
住所:京都市上京区千本通蘆山寺上ル 閻魔前町34番地
ホームページ: http://yenmado.blogspot.com
亀村佳都
京都市まちづくりアドバイザー
子どもたちが一生懸命練習してきたダンスを思いっきり踊る姿を見て、子どもたちが元気に楽しく遊び、家族と一緒に過ごすこどもの日は、子どもたちにとって一生の宝物になるだろうなあ、と感じました。
思いっきり好きなことに打ち込む子どもたちのキラキラした表情に心を打たれました!