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日常に溶け込む子どもの居場所「だがしやパンダ」

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桃薗学区にある住宅街にたたずむ「だがしやパンダ」は、その名のとおりパンダの看板とのぼりが目印。店主の鈴木朝渚(あさな)さんが自宅のガレージを開放して2021年10月にオープンしました。お店の中に入ると、色とりどりの駄菓子やおもちゃが数えきれないほどあり、見ているだけでも楽しい空間が広がっています。

「あなたも駄菓子屋さんをやってみたら。きっと向いているよ。」と、イベントで駄菓子ブースを出店していたママ友からの一言がきっかけとなり、お店を開くことになったそうです。「それまで自分の店を持ちたいと思ったことさえなかったのに、なぜかやってみたい気持ちが芽生え、自分の子どもに尋ねたら『ママ、駄菓子屋さんやって』と大賛成。駄菓子屋さんをするなら、子どもが小学生のうちに始めたいなと思いました。放課後の時間、ガレージで、パンダをマスコットキャラクターにして…、と駄菓子屋さんのイメージが色々と浮かび、2週間後にはガレージの壁を緑色に塗って準備し始めていました。」

オープンの日は、友達やママ友が子どもを連れて大賑わい。以降、学校帰りの子どもが入れ替わり立ち替わりお店にやってきて、今ではすっかり「パンダのおばちゃん」と呼ばれるようになりました。

子どもと接して、駄菓子の品出しや賞味期限の確認をしていると、あっという間に時間が経つそうです。取材で訪れた日も、子どもたちはお小遣いを手にやって来ました。選んだ駄菓子をカゴに入れ、「あかん。お金が足りひん…」と駄菓子を棚に戻す子。100円で、なるべくたくさんの駄菓子を選ぶ子。「大好きなの」とぶどう味を好んでカゴに入れる子。あれこれ迷う子もいれば、お気に入りの駄菓子をサッと手に取る子もいました。買ってしばらくしたら「当たりました」とお店に戻って来る子や「○○くん、来た?」と友達を探しに来る子にも会いました。
常連の子どもが元気よく店に入って来る姿も、初めて訪れる子どもが「あ、ここだー!」と駆け寄って来てくれる姿もかわいらしく、「何気ない駄菓子屋さんの毎日の時間が楽しい」と鈴木さんは話します。

駐輪・駐車スペースがないため、コインパーキングや自転車を壁側に寄せて停めるなどの案内がなかなかうまくいかないという悩みや、仕入れ値が上がり、売値も上げざるを得ない心苦しさもありますが、よく来る子どもは自転車の停め方も心得て、取材中に「10円高くなったよ」と鈴木さんが伝えると、子どもたちが「泣く」「もう買えません」「じゃあ、これは上げないで」と返し、物価高の辛さを共有している様子が伺えました。

お店をオープンしてほどなく、斜め向かいにある訪問看護ステーションの職員さんが、敷地内にベンチを置き、壁に大きな黒板を掛けて、子どもが遊んだり買ったお菓子を食べたりできるスペースを作ってくれたそうです。子どもが安心して過ごす場ができて、鈴木さんは心から感謝されていました。

「だがしやパンダ」は、西陣の朝市マルシェや児童館などの地域のイベントにもできる範囲で出店しています。顔見知りの子どもが駄菓子を求めてやって来る姿を見て「駄菓子屋が好きな子はお祭りも好きみたいですよ」と鈴木さんは教えてくれました。

少子高齢化によって全国的には駄菓子屋さんの数は減っているものの、SNSを通じて「全国駄菓子屋オーナー会議室」という情報交換の場があり、商品を選ぶ時の参考にしているほか、子どものリクエストを聞きながら駄菓子やおもちゃを仕入れ、子どもが楽しめるよう工夫されています。

もうすぐ迎える夏休みの混雑具合を尋ねたところ、「めちゃくちゃ暇なんですよ」という意外なお返事が。長期休暇や週末よりも、平日、特に学校が早く終わる木曜日に子どもがたくさんやって来るそうです。

「日常使いで、子どもがいつ来ても変わらずある店になっていたらいいなと思います。子どもの思い出の一つに駄菓子屋があったら嬉しいです」と鈴木さん。日々の暮らしに溶け込むように、「だがしやパンダ」は子どもを温かく迎えています。

だがしやパンダ
営業日:平日15:00~17:00、土日祝14:00~17:00、水曜定休日+不定休。
Twitter @dagashi_panda

レポーター

亀村 佳都
まちづくりアドバイザー
店内に駄菓子がギュッと詰まっていて、まるでお菓子の家に入ったようにワクワクしました。子どもが友達と一緒に行ける地域の駄菓子屋さんは、子どもにとって行きつけの場、社会と関わる場になっているようでした。

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