約6,000人が暮らす小川学区では、小川住民福祉協議会と小川学区民生児童委員協議会、老人福祉員が中心となって、2024年4月17日から小川自治会館で買い物を通じた地域交流を進める取組が始まりました。
きっかけは、学区内にあったスーパーが2021年に閉店してしまったことです。これまでは、身近な生活圏で買い物ができていましたが、今は少し離れたところまで行かないとスーパーがなく、買い物がしづらくなってしまいました。加えて、コロナ禍で外出を控える暮らしが続き、体力に衰えが出たり、地域とのつながりが感じられなくなったりする様子も見受けられました。
このような暮らしの変化を受け止め、2022年秋から、上京区社会福祉協議会や小川地域包括支援センターも交えて、地域としてどのようなことができるだろうかと話し合いが始まりました。「生活に欠かせない買い物をする場をつくることで、高齢者が外出するきっかけとなり、交流もできたら」との方向性が見えてきた2023年秋からは、毎月集まって準備するようになりました。移動販売について話を聞き、他区で行われている移動販売の様子をメンバーが見に行って共有するなどして、2024年3月6日と15日に、ダイエーグルメシティ上桂店で実施している移動販売車を呼んで「お試し会」を開きました。
お試し会では、レジに行列ができました トラックには、たくさんの商品が並んでいます
「スーパーまるごとやってきます」というキャッチコピーでチラシを作って、民生児童委員を中心に周囲に声をかけた甲斐もあり、お試し会にはそれぞれ43名、31名の地域の方々が来られました。お菓子、野菜、果物、パン、飲み物など600点もの品揃えの中からお客さんは商品を見て選び、ご近所さん同士が会話するなどの交流が生まれていました。
生鮮食品から惣菜、お弁当、お菓子まで様々な品物が並びます
この取組には、同志社大学のShinmachi Activate Project (通称SAP(サップ)。以下、サップという。) が、メンバーの一員として参加しています。サップは、2008年から政策学部と社会学部の学生が学ぶ新町キャンパスを拠点に活動を始めた団体で、新町エリアの活性化を目的に「キャンドルナイト」イベントや、ボランティアを通じた地域交流を行っています。
サップが京都市小川特別養護老人ホームでキャンドルナイトを行った時、坂下壽秋小川住民福祉協議会会長から「隣にあるみつば幼稚園の園庭でもキャンドルナイトをしてみたら」と提案を受けたことから知り合い、買い物支援活動に加わることになったそうです。企画会議に参加してチラシをデザインし、移動販売の日にはお客さんの買い物かごを持って寄り添い、荷物を自宅まで運ぶお手伝いをしています。
坂下会長は「学生の参加は本当にありがたいです。なにより、買い物に来られる人たちがスタッフや学生との会話を喜んでいます。それがとても嬉しいです」と目を細めます。
学生にとっても地域の方とのお話は楽しく、「ありがとう」の声を聞くと、お手伝いできることをありがたく感じるとのこと。会話のキャッチボールは幸福感ももたらしているようでした。
お試し会を経て、移動販売の日を定期的に設けるようになった今、より多くの地域住民に足を運んでもらえるように「のぼりを立てて開催を知らせよう」「チラシを各戸配布してみよう」など意見を出し合い「商品を見つけやすいようにポップを作ろう」「暑さ寒さを感じる日は屋内で行おう」と、工夫しながら運営をしています。
坂下会長に今後の展望を伺ったところ「買い物の不便さが少しでも解消され、日常生活の楽しみが増えるような場になればいいなと思います。開催場所を探すのが難しいのですが、高齢者にとって身近なところで買い物ができるよう2・3か所で開催できるようになったら嬉しいですね」とお話いただきました。
買い物支援活動を通じて、地域住民同士や学生との交流など、地域の中で支え合いの輪が広がっています。
小川学区移動販売
日時:毎週水曜日9:50-10:50
場所:小川自治会館
亀村 佳都
まちづくりアドバイザー
企画会議やお試し会を経て定期的な移動販売が始まる過程に私も携わらせていただきました。歩いて行ける範囲で買い物を済ませられるだけでなく「手伝います」「ありがとう」とのやり取りから人とのつながることの良さ、ありがたさを感じています。