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おこしやす上京Season2「食の上京」畑かく流!おだしのお話。

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上京区民会議及び上京区役所では、「2025大阪・関西万博」の開幕1年前を迎えた今年、1年を通じて「食の上京」をテーマに、「京の食文化」と上京のあらゆる食文化の魅力に触れる機会を届けています。
その第1弾として、令和6年6月29日(土)に、京料理の基本ともいえる「出汁(だし)」の取り方やだし巻き卵の作り方について、京料理畑かくの店主 新造一夫さんに教えていただきました。


▲風情ある2階の大広間にて開催されました

▲京料理畑かくの店主 新造一夫さん

100名を超える応募者の中から、抽選で選ばれた20名が参加しました。
創業100年を数える老舗日本料理店「京料理 畑かく」は、ぼたん鍋の元祖といわれる名店。御所の御狩場である京都洛北・雲ケ畑の宿屋の息子として生まれた先々代が、上京区で大正7年に創業しました。
数寄屋造りの風情ある店内に一歩足を踏み入れた瞬間から出汁の良い香りに包まれていました。



▲どきどきしながら玄関までのアプローチを進み、受付をします。


▲会場の様子

体験教室は、京料理のお話、出汁の取り方のレクチャーに加え、昆布出汁、昆布出汁+鰹出汁を実際に試飲し、取った出汁を使ったすまし汁や炊き合わせなどの軽食を食べながら、順番に自分が食べるだし巻き卵を作る、という大変ぜいたくな内容です。

■京都と出汁

もともと山間の地である京都には、平安京以来、都がおかれ、人・モノ・財が集まってきました。里山から猪や鹿、近江からは琵琶湖の魚が運ばれてきました。幸い土は肥え、水も豊富だったので、農作物は育てやすかったそうです。江戸時代にはこの野菜をよりおいしく食べるため、北前船で来る昆布と、和歌山から来る鰹で出汁を取り、煮炊きものやお吸い物の食文化が生まれました。
特に京都の水は、ミネラル分の少ない軟水で、昆布の旨味成分が抽出しやすいのです。

■出汁の取り方


▲出汁の説明をする新造さん。

今回、畑かく流の出汁について教えていただきました。
使った昆布は北海道の利尻昆布。すまし汁に最も適しているとのことです。
ほかにも、日高昆布、羅臼昆布などがあり、これらは濃い出汁が取りやすいので、ご家庭で使うにはおすすめだそうです。
基本的に昆布は洗わずに使います。表面についている白いのは、旨味成分です。
10人前の出汁だと、2リットルの水に昆布30gを入れて火にかけます。火加減は、約1時間で80℃に達するくらい。80℃を過ぎるとえぐみだけになるそうです。鍋の中に小さな気泡がつき、断続的に上がってくると昆布を引き上げるサインです。その後、強火にして沸騰させ灰汁を取ります。



▲教室開始の約1時間前から火にかけていた昆布。


▲昆布の様子を見ながら、火加減を調整します。

▲昆布を取り出します。

一度ここで試飲しました。


▲昆布出汁

▲試飲する参加者

次に、沸騰した昆布出汁の中に、昆布と同じ量の鰹節を一気に入れます。


▲お鍋いっぱいに広がる鰹節

▲手早くこして出汁を取ります。

もう一度灰汁を取り、手早くネル布又はキッチンペーパーでこします。
その出汁をさらに試飲しました。


▲新造さん自ら出汁を分けてくれました

▲参加者も味の違いを実感

昆布のグルタミン酸(植物性)、鰹節のイノシン酸(動物性)の相乗効果でおいしさはパワーアップし、多くの参加者がそれを実感したことでしょう。

■だし巻き卵の実習

そして、いよいよだし巻き卵の実習です。
2Lサイズの卵1個にあらかじめ取って冷ましておいた出汁20ccと薄口しょうゆ2cc(小さじ1杯程度)を混ぜて、焼きます。

▲教室用にカセットコンロと家庭用のフライパンで実演してくださいました

火加減に注意しながら、手前から奥に巻きます。高すぎない温度がポイントです。3回程度に分けて、少しずつ巻いていきます。
葛を入れておくと、卵に出汁が含まれたままになり、時間が経ってもおいしさが逃げないそうです。
そして順番に自分が食べるだし巻き卵を作ります。





▲そばで見守り、時には手を貸してくださり、あたたかいご指導をいただきました。


▲自分で作っただし巻き卵をほおばる参加者

さて、お味はいかがでしょうか?皆さんとても楽しそうで、笑顔あふれる時間となりました。



▲出汁を使ったおいしいお料理も一緒にいただきました。

■最後に

「とにかくおいしく食べよう!」としたのが京都の食文化。天然の昆布、鰹節、京都の軟水で取ったお出汁が力を発揮したのです。
人口調味料を使うと味がぼける、と新造さんは言います。塩、しょうゆ、砂糖、みりんなどを多く使わないと味が整いません。古くからの料理法は、人の健康に一番やさしいのですね。
出汁の利用方法、活用方法も教えていただきました。
料理人の技を隠さず丁寧に教えてくださる気さくなお人柄と、出汁の香り、畳や障子といったあたたかい和の空間で、終始和んだ雰囲気で進められました。


▲質問も飛び交い、和やかな雰囲気です。

参加者からは「なかなかきれいに巻けなかったけど、ずっとそばで教えてくださり、最後は上手に巻けました。」「おいしくできました!ほかのお料理も全部おいしくて、とてもぜいたくでした。お家でもやってみたいと思います。」「このお魚のレシピも言える範囲で教えてください」など皆さんの関心の高さがうかがえました。


▲熱心にメモを取る姿もたくさんありました。

▲「畑かく流」の出汁の取り方を惜しみなく教えてくださいました

新造さんのお話はどれも興味深いですが、「上京区は昔からの料理屋が多く残っています。西陣織の職人さんらが食べに来てくれて、お互い支え合って成長してきたからです。
料理屋さんそれぞれに出汁の取り方、だし巻き卵の作り方は異なると思います。今回は畑かく流ということで、初めてご紹介させてもらいました。
本当は、味を確かめながら目分量でしています。基本はありますが、家庭でも好みに合わせて調整してみてください。」と新造さんらしいあたたかい言葉で締めくくられました。
おいしくてやさしいものは、人の心もほっこりさせるのですね。
今後のおこしやす上京「食の上京」の教室やイベントも楽しみです。

カミングレポーター

岡元麻有
幅広い年齢の方が参加されておられ、関心の高さがうかがえました。このようなイベントを通じて、私らしいおいしさに、たくさんの方が出会えたらいいなと思いました。

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