上京区民会議及び上京区役所では、「2025大阪・関西万博」の開幕1年前を迎えた今年、1年を通じて「食の上京」をテーマに、「京の食文化」と上京のあらゆる食文化の魅力に触れる機会を届けています。
参考)おこしやす上京Season2「食の上京」第一弾レポート
▶畑かく流!おだしのお話。https://www.kamigyo.net/public_html/event_report/report/20240716/
その一環で、9月8日(日)、北野天満宮 文道会館を会場に、上京が誇る食の有職文化として、平安時代から続く歴史ある食の儀式「生間流式庖丁(いかまりゅうしきほうちょう)」の披露と、有職菓子を味わうスペシャル企画「上京が誇る食の有職文化」が開催されました。
残暑厳しい中、小学生から大人までおよそ70名の参加者があり、盛り上がりを見せました。
冷泉実行委員長からは、上京区はまちの中に文化が根付いていること、北野天満宮からは、文化の神様である北野天満宮で食をテーマにした事業の開催は非常に縁がある、といったお話がありました。
「式庖丁(しきほうちょう)」は、平安時代から宮中でめでたい日に行われたとされる食の儀式で、大きなまな板に乗せた魚や鳥を、直接手を触れずに庖丁刀とまな箸を使って切り分け、瑞祥というめでたい形を表すものです。
式庖丁は藤原一族によって完成され、当時の貴族・公家に伝わり、現在で1100年ほどになります。
生間流はその流儀のひとつで、現在、三十代目家元 生間正保氏(萬亀楼10代目の当主)が継承されています。
式庖丁には、「三鳥五魚(さんちょうごぎょ)」が主に用いられます。三鳥とは白鳥、鶴、雉(きじ)の3種の鳥、五魚は鯛、鯉、スズキ、ヒラメ、マナガツオの5種の魚をさします。
その技は、脈々と伝えられ、45冊ある文献には1冊に50種もの型があるそうです。
お払いの儀式を行った後、三宝から庖丁刀と鯉を持ち出し、まな板に置きます。それから、式庖丁の技が光ります。
この日は、「神巌の鯉(しんげんのこい)」が披露されました。
「神巌の鯉」は2つの意味を持ちます。ひとつは、鯉の身を細く長くつなげることから、生命を表現しています。
もうひとつは、切った鯉の形を伊勢の夫婦岩に見立てることから、夫婦の絆、子孫繁栄を表現するのです。
厳かな雰囲気の中、巧みな庖丁さばきで鯉が飾りつけられ、会場は大きな拍手に包まれました。
式庖丁の後には、貴重な巻物や書物を見せていただきました。
江戸時代の大きな饗宴を記録したものや献立、豪華に見せるための盛り方など細かく記され、それを支えた生間流の存在を知ることができ、参加された方は熱心に見入っていました。
続いて、第2部では、太田達氏(立命館大学 食マネジメント学部教授、有職菓子御調進所 老松 当主、公益財団法人 有斐斎弘道館 代表理事)が有職菓子について講演しました。有職菓子は、古来より朝廷に伝わる有職故実による儀式・典礼の際に使われる菓子のことです。
参加した人たちは源氏物語(若菜上)にも登場する「椿餅」を試食しながら、当時の食文化に思いをはせていました。
つややかで美しい椿の葉をめくると、ほどよい甘さのこしあんが道明寺で包まれています。この独特の餅菓子は、和菓子の原点ともいわれています。
参加者からは、「歴史と深い食文化を知ることができ、大変満足でした。椿餅は初めて食べましたが、とてもおいしかったです。」といったお声がありました。
ほんのりとした甘い余韻を残し、気さくな講演者のお話で、身近に「上京が誇る食の有職文化」を堪能することができました。
岡元麻有
今私たちがいる場所で平安貴族も同じものを味わっていたのだろうか、同じ姿を見ていたのだろうかと、想像を膨らませるだけでわくわくします。歴史と文化が深い上京区には、食文化の魅力もつまっていることを改めて実感しました。