烏丸下立売通角に、レンガ造りの美しい教会建築があります。
こちらは1898年に献堂された京都市指定有形文化財指定の聖アグネス教会(平安女学院礼拝堂)です。聖アグネス教会であるとともに、日本聖公会京都教区の主教座聖堂、平安女学院の礼拝堂でもあり、日々、祈りが捧げられています。
京都には、年に一度、大切に守り継がれてきた京都市内の近代建築を、所有者やオーナーの厚意により一斉公開するという「京都モダン建築祭」があり、2022年からスタートしています。建築文化を広げ、育てるプロジェクトで、聖アグネス教会も公開建築の一つとして参加されています。
「モダン建築」という視点で通常一般非公開の建築を見学することができるということで、例年多くの来場者があります。
上京区では、聖アグネス教会、京都府庁旧本館、元西陣小学校、今原町家、be京都、毎日新聞ビル、京都府立医科大学本部棟などが公開されました。
今回、京都モダン建築祭との連携事業として、ジュニア京都文化観光大使が聖アグネス教会を見学し、グループワークを行う取組を取材しました。
京都市教育委員会生涯学習部が毎年11月~12月にかけて、京都に興味があり、もっと知りたい!という熱意ある京都市内に住む小学5年生を募集しています。(審査あり)
ジュニア京都文化観光大使(以下、「大使」という。)の役割は、京都ならではの文化・伝統産業・観光などに関するさまざまな体験を通して感じた魅力を発信することです。大使に任命されると、1年間を通じて6回ほど活動し、学ぶ様子や感想が「あつまれ!京わくわくのトビラ」紙面やホームページなどで紹介されています。
この日、大使の13名が熱心に見学しました。
子どもたちの京都に関する興味・関心を一層深める機会となっているのですね。
会堂内の壁には30面以上のステンドグラスが飾られており、大部分は創建時のものです。設計者であるJ.M.ガーディナーがデザインし、日本のステンドグラス構造のパイオニアになった宇野澤辰雄による制作とされています。
ガーディナーは米国聖公会の宣教師で、京都では、円山公園にある長楽館の設計者として知られています。
1981年に設置されたパイプオルガンもシンボリックで、礼拝の際に奏楽で使用されています。
取材日の朝も素敵な音色が教会から聴こえていました。
祭壇中央の大きな布は、ドッサルといい、現在の物は1979年に作られました。その周囲の布は、説教壇などにかけられている布と共に緑色ですが、クリスマスの4週間前から紫色に、クリスマスには白色に変更されるそうです。
はじめに、平安女学院大学の毛利憲一教授より、聖アグネス教会の建築の見どころを中心に過去の貴重な資料も見せていただきながらお話を聞きました。
次に、聖アグネス教会の小林宏治司祭から主にキリスト教とかかわる教会の細部について、お話を聞きました。
大使たちの熱心にメモを取る姿が印象的で、司祭からの質問にも積極的に手をあげて答えてくれました。大使たちからも「その数字はどういう意味がありますか?」「この形の意味は何ですか?」といった素直で確信をついた質問がたくさん出てきました。
その後、教会内を歩いて回る時間も作ってもらい、普段見ることの少ない教会の細部まで知ることができました。毛利教授も小林司祭もとても気さくに大使たちに話かけられておられ、とても充実した時間となりました。
その後、国登録有形文化財である明治館に移動し、グループワークと発表を行いました。
貴重な建物でのグループワークは少しドキドキした様子でしたが、これまでに見たことがあるモダン建築や、9月に活動を行った「旧三井家下鴨別邸」などの和風建築、住んでいる家、学校などと比べての感想などを話し合いました。
短時間にもかかわらず、大使たちは丸や四角といった図形、屋根の形、数字、色など様々な視点に着目して学ぶことができたようです。
最後までお付き合いいただいた毛利教授からも、子どもたちの視点、学びへの意欲に対して評価がありました。長い歴史を歩んできた建造物を通し、大使たちは京都の近現代建築への保存活用の観点での理解が深まったようです。
同席されていた保護者や関係者も、建物と時代背景、歴史、西洋と日本の違いなど、存分に建築を感じ、建築と対話をした時間となりました。
岡元麻有
教会の中は、ステンドグラスから差し込む光が時間によって表情を変え、とても美しかったです。
建物そのものの存在感に、大使さんたちの熱意や、丁寧に答えてくださる先生方のやさしさが加わり、落ち着きと活気のある時間となりました。
古い建物を維持活用していくことは機能面、安全面、費用面などの観点から大変なことも多々ありますが、こうして足を運び、過ごすことでその意義が体感できるのではないかと思いました。