SOO(ソマル・以下SOO)は2016年に京都友禅協同組合に所属するメンバー有志で立ち上げた、京友禅ブランドです。アルファベットでS・O・Oと書き、「ソマル」と読みます。
和装需要が減少する中、着物以外の用途で販路開拓を目指そうと、組合青年会で勉強会を重ね、その有志で発足しました。京友禅で手染めした絹の眼鏡拭き、タブレット・パソコン拭きといった「おふきシリーズ」を展開しており、普段は京都で着物用生地の染色業を営んでいます。各社それぞれの強みをいかして協力し、企画、製造から取扱店舗との交渉や販売までをメンバー自ら行っています。
直営店がある㈱関谷染色内にて、SOO代表の日根野さん、副代表の関谷さんにお話を伺いました。
各社とも、京都に根を張り、日本の伝統文化に従事する仕事を続けてきました。
和装産業が低迷する中、もっと身近に、そして手軽に京都が誇る伝統技術を感じてもらいたい、そんな想いを持ち、SOOを立ち上げました。
とはいえ、これまでは、お得意先様からの依頼を受けて染色する仕事を行ってきたため、最初は何を作ったらよいのか、どうやって販売したらよいかわからなかったと言います。
発想のきっかけとなったのは、たまたま日根野さんのお父さまが仕事の最中に発した「店にある生地で眼鏡を拭いたらきれいになるわ。」という一言でした。
それから、試行錯誤を重ね商品開発を進め、製品化に至りました。
開発当初は、メガネを購入するとおまけでついてくることもあるメガネ拭きを、新たに作って販売しても売れないのでは、という声もありました。
それでも、手に取ってもらいやすく、身近な存在にしたいという思いで、進めていきました。
絹にこだわり、絹素材の中から眼鏡拭きに適した着物生地を使用して製作しています。着物の柄を染色した後、上からさらに眼鏡拭きの柄を染色し、全ての染色工程はいつもと同じ染工場で職人さんが着物用の高い染色技術を持った職人が仕上げています。
いつもと変わらない自分たちのネットワークで、SOOの製品はできているのです。
結果的にメガネ拭きは、手軽に使ってもらうことに、とてもフィットしました。
今ではスマホ拭き「おふきmini」、タブレット・パソコン拭き「okkiiおふき」なども生まれています。
コンセプトやデザインが認められ、2017年にはグッドデザイン賞を受賞しています。
SOOの製品は、京都でのみ販売を行っています。
パッケージには着物の保管に使う「たとう紙」を用いて、大切に扱い、想いを伝えています。
世の中にたくさんあふれるプロダクトに対抗し、一時のブームになってしまうのではなく、関心を広げること、身近に使ってもらう、知ってもらう、伝統産業の振興に関心が向くことを大切にしています。
その物語が共感を呼び、現在、コンビニエンスストアや大手百貨店での展開、タイアップ企画なども手掛けており、お土産や贈り物として人気のアイテムになっています。現在では京都市内の百貨店や雑貨店など約40店舗で販売されています。
「これまで絹に縁がなかった方たちにも手にとってもらいたいです。年齢層、性別も隔てなく、世界中で使ってもらえるものです。日常に、身近にあることで京都の伝統文化を知ってもらいたいです。」と、日根野さんは言います。
関谷さんは、着物に比べ生地が小さく、商品回転率が高いことから、「若手友禅染職人の活躍の場、育成の場にもしていきたいと考えています。」と未来への想いも伺いました。
「伝統産業の衰退は業界全体にとって顕著ではありますが、それでも上京区は、職人さんが多く残るまちです。こうして地場産業を守っていくことが、京都の魅力を守り、発信することにつながると思います。後世へも残していき、発展していきたいです。」そんなお二人の熱い想いを伺い、私も一緒に応援していきたいという気持ちになりました。
岡元麻有
Art Gallery be京都 館長。
おふきシリーズは京都の贈り物として喜んでもらえ、贈る側にとっても嬉しい、そんな長く愛してもらえる存在です。取材を通じ、仲間を大切にされ、京友禅の技の魅力をモダンに表現されているお姿、それぞれ本業をお持ちでありながら、継続して発展されている様子にとても可能性を感じました。