「やさしい日本語」を広める会は、日本社会で生活する言語文化が異なる人々とのより良い共生を目的とした団体です。その活動内容は、主に、日本語を第一言語とする人を対象に、わかりやすい日本語による外国人とのコミュニケーションの方法を普及させることです。具体的には、難しい単語や文法を使わない「やさしい日本語」の意義と使い方のコツを伝えるワークショップやセミナーの実施、冊子や動画での紹介などを行っています。今回は、「やさしい日本語」を広める会の代表 宮島さん、メンバーの佐々木さん、黒田さんの3名にお話を伺いました。
「やさしい日本語」を広める会は、2020年から活動されている団体です。以前に所属されていた別の外国人支援団体で、京都在住の外国人を対象としたガイドブックなどを作成されていました。そこで、定住外国人だけでなく、外国人と接する日本人への支援を行いたいと思い立ち、現在の活動を始められました。2020年には、せいしん幼児園(京都市上京区)にて、外国につながる園児とその保護者とのコミュニケーションの拡充を目的に、保育士を対象とした「やさしい日本語」によるコミュニケーションの実践研修を実施しました。参加した職員からは、「英語でなくていいとわかってホッとした」「園からの手紙等、文章をそのまま伝えなければと思っていたが、必要なことを簡潔に伝えられるよう意識できるようになった。」「保護者からも日本語では何というか?と質問されることもあり、コミュニケーションが取れている」という反響があったそうです。
2020年以降は、新型コロナウイルス感染症の影響により、ワークショップの実施が困難となりましたが、そうした逆境下においても、リーフレットの作成・配布、日本在住の外国の人や外国の人と接する職場の方々へのアンケート実施とフィードバック、オンラインセミナーへの事業展開などを精力的に行うことで、今日までの活動へと至っています。
日本語が十分でない外国人にもわかりやすい情報提供の必要性が認識されるようになったのは、災害がきっかけでした。
阪神淡路大震災の際には、外国人の死傷者が、日本人に比べて、約2倍の割合だったそうです。必要な情報が、外国人へ迅速•的確に伝わらなかったことが原因でした。こうした悲劇を繰り返さないためにも、「やさしい日本語」で外国人に対して情報提供していく活動が始まりました。
「(日本人が)日本に住む外国の人へ話すときには、まず日本語で話しかけることをお勧めしています。つい日本人は、外国の人を見かけると英語で話さないといけないと感じてしまうのですが、多くの在留外国人にとっては、英語よりも日本語の方が実は分かりやすいのです。」と宮島さん。
実際に、外国人と話すときは、「はさみの法則」が大切です。相手に伝わりやすくするために、はっきり、さいごまで、みじかい文章にするのが「はさみの法則」です。そしてゆっくりと話します。「ここで支払いをしてください」ではなく、「ここでお金を払ってください」というように、やさしい言葉を使うことで、相手に伝わりやすくなります。
そういった「やさしい日本語」を使うことで、言語文化が異なる方々とも積極的にコミュニケーションをとり、より生きやすい社会をつくることを大切に活動しているそうです。
佐々木さんは、「ぱっと外国人を思い浮かべたとき、私たちは、何故か、勝手に欧米系の人を思い浮かべてしまう。でも、実際に世界中で欧米系の人は世界人口の6分の1もいないくらいです。京都にはたくさんの留学生がいますが、中国人や韓国人、ベトナム人など、さまざまな国籍の方がいます。それなのに私たちは外国の人に出会うと英語を話そうとしてしまっています。まず初めに、『外国人=欧米系や英語圏の人』という発想を、自分の中から抜くことが大切かもしれません。」とおっしゃっていました。
コロナ禍で、京都で外国人観光客の姿を見かけることは少なくなりましたが、実際には外国人が減っていないように感じることから、「案外、定住外国人って多いのかもしれない」と気付く人が増えてきたといいます。
コロナ前に活動を説明した際には、外国人旅行者とどのようにしゃべったら良いのかと尋ねられることもしばしばありました。だからこそ、やさしい日本語を広める会の活動が理解されやすくなった部分もあったようです。
宮島さんたちは、「やさしい日本語」を広めることについて、「お隣にいる人たちが生活に少しでも不便を抱えているのであれば、それを解消する行動を取ることができれば良いですよね。根底にあるのは、『ここに暮らす外国の人と日本の人が同じように生活できるようにしたい。』ただそれだけのことなのです。」と熱意を持って語られていました。
掲示物を作成する時には、「複雑な文章を書かない」、「難しい漢字を使わない」、「ふりがなをふる」ということを考えるだけで、充分やさしい日本語になるそうです。
また、外国の人と接する際には、まず日本語で話しかけてみて、「簡単な日本語による意思疎通はできるのか」、「英語の方が理解しやすい人なのか」と自分なりに考えてみることがお勧めだそうです。
日本語も英語も両方難しい場合には、AI翻訳等も積極的に活用すると良いです。その際にも、短文でシンプルな日本語を入力することで、翻訳もより正しくできるようになるとのことでした。
また、「Voice Tra(ボイストラ)」というアプリもお勧めです。他の言語に訳した日本語を、再度、日本語に翻訳し直してくれるため、正しく伝わっているかどうかを確かめることができるそうです。
「やさしい日本語を使うことは、『言葉のユニバーサルデザイン化』だ」と佐々木さんは言います。「漢字にふりがなをつけることは、階段に手すりをつけるようなもの。『マジョリティのほうに合わせてもらおう』ではなく、一人ひとりが大事にされているのだと思えるような環境・雰囲気づくりがとても大切だ」と、おっしゃっていました。
また、誰もが日常的にできる大切なことは、自分の中にも実は差別や排除といった考えがあることに気づくということでした。
今年度は、保育・幼児教育施設で仕事をされている方々を対象にワークショップを実施されたとのことですが、「会社や病院など、お声をかけていただけるなら、色々な人や施設に向けたセミナーを行っていきたい。それだけでなく、幅広い世代、例えば皆さんのような大学生に対しても、やさしい日本語を伝えたい。」とおっしゃっていました。
このインタビューで今回学んだことを、日々のサークル活動や生活の中で積極的にいかしていこうと思います。
・2022年度 保育・幼児教育施設へのヒアリング報告書
▶PDFデータ
https://tsukuru-kyoto.net/wp-content/uploads/2022/12/c946be0998bb714e1410d57484f75108.pdf
・外国人にわかりやすい やさしい日本語 ―保育・幼児教育施設編―
▶PDFデータ
https://tsukuru-kyoto.net/wp-content/uploads/2021/11/e13f91a8d17eab24fde0c99dcad4229e.pdf
・ワークショップ案内
「やさしい日本語」を広める会
京都市市政参加ポータルサイト まちづくり・お宝バンク
https://tsukuru-kyoto.net/bank/387-2/
同志社大学 政策学部1年生
(福田、松野、南、八代)