上京ふれあいネット カミング

「時代を変える石屋へー後世に残る石文化を築く」

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▲石茂 株式会社芳村石材店外観

▲目の前にはかつて船着き場だった堀川が流れます

東堀川通椹木町に店舗を構える石茂㈱芳村石材店。京石工発祥の地である京都白川村にて、今から290年ほど前の享保年間に創業しました。文政13年(1830年)に、現在の地へ移住し、それ以来、芳村茂右衛門(もえもん)の名を代々世襲し、屋号を石茂(いしも)と称します。

町家風の店舗は、石の鳥居、狛犬、大きな招き猫が迎えてくれます。
一歩足を踏み入れると、ひんやりと冷えた石の空間が夏の暑さを癒やしてくれました。

山田代表取締役の次女、入社6年目の山田麗(うらら)さんにお話を伺いました。


▲山田麗さん

石の業界は分業で、石の採掘、彫刻・加工、企画・設計施工に大きく分類されます。
石茂では、企画・設計施工を中心に、社寺建築・数寄屋建築における石工事、文化財修復、一般住宅における石工事などを担っています。
また、墓石のデザイン設計、加工、施工に加え、オリジナル石グッズの企画から販売まで多岐に及ぶ事業を展開しています。
神社や寺から直接依頼を受けることもあれば、工務店、墓を建てたい個人の方、記念碑を奉納したいという方など幅広いお客様から依頼を受け、日々、石にまつわるお仕事をしています。
「お客様大事」という家訓にあるように、取材中も、出会う方皆様が気持ちの良い挨拶をしてくださいました。

私たちの暮らしと石の関係


▲店内の商談スペース

▲明治16年の「都の魁」に掲載された芳村石材の店頭の賑わいと、船着き場があった堀川の様子

石は何千年も前から、日本人の文化や暮らしに密接しています。時には自然の驚異から人々を守り、時には道具としても活用されています。建築の土台石や、敷居石、土間石、壁石、階段など、石に出会わない日はないでしょう。

上京区内の施工実績を一部あげると、京都御所の宗像神社、北野天満宮、晴明神社、護王神社などで目にすることができます。

実績詳細は石茂の公式WEBサイトをご参照ください。
▶https://kyoto-ishiya.jp/

人々の想いや信仰心、暮らし、景色など壊れてはいけないものだからこそ、最新の注意を払って携わっています。

私たちの暮らしと密接にある石ですが、少し視点を変えると、新しい景色が見えてきます。
吸水性や耐火性に優れている石、水や酸に弱い石など、用途によって選ぶ石も変わりますが、石の仕上げ方もいろいろあり、職人の技が光ります。


▲面によって磨き方が異なるサンプル

▲専用の道具で仕上げます

平らな面を専用のノミで、刻み目を付ける小叩き、石表面に冷却水を散布しながら加熱用バーナーで表面を焼射し、結晶を弾かせて仕上げるバーナー仕上げなど、同じ石でも見た目も触り心地も違うので不思議です。


▲青立山石(アオタツヤマイシ)・黄立山石(キイタツヤマイシ)ともに兵庫県の石

山田さんは、国内の石材産地の普及にも努めています。

課題と展望


▲道具や法被

日本各地には様々な種類の石材産地があります。そこには伝統工芸士をはじめ、優れた技術をもった職人たちが活躍しています。石茂は、多くの産地や石工とつながりを持ち、お客様のニーズに合わせた、高品質の国内産地の石造品を提案し、また日本の伝統芸術の継承にも貢献できれば、と話してくださいました。


▲店頭で販売されている招き猫や狛犬

▲高さ20センチ程度の飾りやすいサイズの小物

石茂では、石の魅力を多くの人に広めるために、新しい商品づくりにも力を入れています。
店頭には、高さ15センチから20センチ程度のお地蔵さんや狛犬、灯篭やブックエンドなどが並び、手に取れるようになっています。
店内奥には庭や外構石材の設計例としてお庭があります。屋外ショールームとして形や石がさまざまな灯篭やお地蔵様などが並び、選ぶことができます。形や石の素材の違いを丁寧に説明してくださいました。


▲さまざまな石の種類のお地蔵様や石像

▲さまざまな形の灯篭

▲お飾りや提灯も地蔵盆の時期ならでは

石茂の従業員は半分以上が女性です。姉の愛さんは、アーティスト活動も行い、石の魅力をアートの観点からも広めています。山田さん姉妹だからこそできることを模索し、SNSの活用、海外への魅力も発信しています。

長い歴史を重ねる中で立ちはだかる課題もあることでしょう。
ですが、「何千万、何億年の年月を変わらずに静かに佇む石という素材を身近に置く、身近に触れることで、現代の休まることのないストレス社会を生きる方々に、安らぎや落ち着きを取り戻すきっかけづくりをしていきたい。日本文化である社寺建築、鬼門除けの文化など、ともに発展してきた石の文化を伝えていきたいと思っています。自然を尊重し、時代を変える石屋になりたいです。」と笑顔で語る麗さんに明るい未来を感じました。

レポーター 岡元麻有

私は京町家で暮らしており、まさに木と紙の文化で過ごしております。お庭の勧修寺型の丸みを帯びた灯篭も気に入っています。木造建築やそれを取り巻く暮らしは石が支えてくれているのだと、取材を通じて改めて感じました。

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