ダンボールおもちゃ創作作家として、上京区内のご自宅でダンボールを用いたものづくりに取り組む増馬英樹(ますまひでき)さんにお話を伺いました。
増馬さんは、3年前まで公共の就職支援コーナーの相談員として働いていました。ある日、ハローワーク烏丸御池にある保育ルームで子どもたちを見守る保育士さんの姿にふと目が留まりました。多くの子どもたちに目を配り、時に走り回る保育士さんたちの姿を見て、「彼らの負担を少しでも減らすことができないか?」と考えたそうです。そこで思いついたのが、子どもが一人でも夢中になって遊べる「自立型おもちゃ」でした。
手始めに、ダンボール素材のおもちゃを4つ作って保育ルームに寄付したところ、子どもたちが楽しそうに遊んでくれただけでなく、保育士さんたちが驚きと感謝の言葉をかけてくれたことが、増馬さんにとって大きな励みとなりました。それが、ダンボールでできたおもちゃづくりへの創作意欲となり、子どもたちにおもちゃを届けるボランティア活動のきっかけとなりました。
「なぜダンボールという素材を選んだのですか」と理由を尋ねると、まず挙げられたのは「廃材の活用」という考え方でした。予算の限られた中で制作を続けるために、捨てられるはずのものを再利用することに意義を感じたそうです。店や家庭で不要となるダンボールは手に入りやすいという良さもありました。
ダンボールでは表現しづらい色や形を求める部分には、例えば、コンビニ弁当の透明なフタやお菓子の箱などの廃材を活用することで、細かな装飾を加えられるようになったり、遊びの可能性が広がったりして、作品に一層の魅力をもたらしています。
「どのようなところに、活動に対するやりがいを感じますか」と伺うと、増馬さんは「自分が作った作品を喜んでくれる人を見ることが、何よりのやりがいです」と答えてくださいました。「喜んでいただけるのが嬉しい」と、取材中に、増馬さんは何度も言葉にされていました。
保育ルームへダンボールおもちゃを寄付して以来、増馬さんはダンボールを用いた創作活動に真摯に向き合い続けています。おもちゃや楽器、スマホ立てやカバンなど、目の前にある素材を活かしながら世界に一つしかない作品を生み出し、時には修理のためにおもちゃを届けた施設を訪ねるのも、多くの人に喜びを届けたいという思いが、活動の根幹にあるからです。
増馬さんにとって、ダンボールおもちゃの創作活動は単なるものづくりではなく、廃材に新しい命を吹き込む「再生」プロジェクトです。そして、その作品が誰かの笑顔を生む瞬間にこそ最大の喜びがあります。2021年に始まった子どものいる施設へダンボールおもちゃを届ける活動は、今では、子ども対象のイベントへの出展や大人向けのダンボール工作教室へと活動の幅が広がりました。
捨てられるはずの素材に新しい価値を見出し、工夫を重ねて形にしていく増馬さんの活動は、持続可能なものづくりの一つの形としても注目されています。「いつかは、壁一面を使って遊べる大きなおもちゃを作ってみたいですね」と抱負を語る増馬さんの挑戦は、これからも多くの人々に驚きと喜びを届けてくれるでしょう。
ますま ひでき(増馬英樹)
屋号:ichiei
メールアドレス:ichiei.sumasu@gmail.com
Instagram: @ichiei.sumasu
中田結菜
立命館大学法学部2回生
今回、増馬さんに貴重なお話を伺い、ダンボールおもちゃについてより深く知ることができ、増馬さんとダンボールおもちゃの魅力を実感しました。廃材のダンボールで子どもから大人まで多くの人を喜ばせることができる増馬さんのアイデアと作品に心惹かれ、将来自分も人に喜んでもらえるような仕事に就き、増馬さんのような素敵な大人になりたいと感じました。貴重なお時間をありがとうございました。
松本康幹
立命館大学法学部3回生
今回お話を聞いて思ったことは増馬さんの活動に込められた想いの力強さです。特に、段ボールという日常的かつ一見すると廃材として扱われる素材に新たな命を吹き込む姿勢には、価値の再発見というこれからの時代に必要なものを感じました。増馬さんが、自身の作品を喜ぶ人々の姿からやりがいを得るというエピソードは、人と人とのつながりが活動を支える重要な要素であることを示しています。作品を届けるだけでなく、修理や改善のために施設を訪れる姿勢は、「作り手」としての責任感と「喜びを届けたい」という強い信念を感じました。