上京区役所と乾隆学区が協力し、自治会・町内会をはじめとする様々な方々が集う地域の輪を広げることを目的とした事業が平成30年度に実施され、私たちは、同志社大学政策学部風間ゼミとして、10月中旬から事業に参加しました。事業は、ワークショップを通して学区が目指すべき「まちづくり」の理想を描くこと、そして、それを見える形の「まちづくりビジョン」としてリーフレットを作成することを目的としています。
二度のワークショップや、地域の方へのインタビューを通して、乾隆学区特有の魅力と結束力を感じることができました。
乾隆学区の魅力の一つ目は、なんといっても行事が多いところです。町内単位や、学区単位での集まりが多くあります。その中でも、特に大きな行事は「乾隆まつり」と「区民体育祭」です。10月の「区民体育祭」には実際に足を運んでみました。大人から乳幼児を含む子どもたちまで、各世代が参加できるように工夫がされていました。競技への意気込みは、事前に練習をしてくるほど、みなさん本気モード。靴が脱げても走り続けている男の子もいました。また、グラウンドの周りには町内ごとにテントが設営されており、和気あいあいと競技を応援されている姿や、お話に花が咲いておられる様子が見られました。
また、タイムスケジュール通りに事が進んで行く運営のスムーズさにも驚きました。
学区の皆さんにお話を伺っていると、「乾隆まつり」も老若男女様々な層の人たちが集まるそうで、出店や出し物など規模の大きいお祭りだそうです。中には、久しぶりに再会した人たちでプチ同窓会を開けるような、立ち飲みスペースもあるのだとか。
二つ目の魅力は、伝統が残るまちだというところです。乾隆学区には数多くの伝統的な風習が現在も続いています。
その一つが地蔵盆です。地蔵盆は毎年8月中・下旬に行われる京都の伝統的な民俗行事で、関西各地で行われていますが、特に京都市内では多くの町内会・自治会で行われています(※1)。その中でも、上京区内は全町のうち89パーセントの町内が実施しています(※2)。乾隆学区には26の町があり、それぞれ独自のあり方で地蔵盆が続いています。私はこの古くからある京都の伝統行事が、少子化でお子さんの参加が危ぶまれていても、色々な工夫でしっかりと受け継がれているというところが、とても素晴らしいと思いました。
また、この他に紫野今宮神社(地元では「今宮さん」と呼びます)の氏子域である乾隆学区では、今宮祭で剣鉾を出す鉾町が4つと、御車を出す町が一つあります。また、町内安全祈願のため、今宮さんへお参りに行く「お千度さん」を14町で実施していて(※3)、お千度さんに行かない町でも、今宮さんでお炊き上げを実施する町があったりと、非常に今宮さんとの関係が深いのですが、残念ながらこのような伝統的な風習は資料にほとんど残っていません。
※1京都をつなぐ無形文化遺産普及啓発実行委員会発行『京都をつなぐ無形文化遺産 京の地蔵盆~地域と世代をつなぐまちの伝統行事~』2頁 京都市文化市民局文化財保護課
http://kyo-tsunagu.net/jizo/
※2同上15頁 ※3乾隆学区の方へのヒアリングによる
これら二つの魅力が、「結束力」のあるまちを作り上げているキーとなっていると私たちは考えます。住民の方々に乾隆の魅力を尋ねても、やはりほとんどの方が、「結束力」と口を揃えて答えられました。
また、行事の運営の仕方にも、まち特有の良さを感じました。行事を行うには、人手が必要になります。お祭りの準備などでは、高い技術が求められる作業もあるでしょう。そのような時、一般的には、町内会長を筆頭に、年単位などで役にあたっている町民が、それを手伝う、いわば町のトップが主体となって行います。しかし乾隆では、町内の誰がどの仕事をするかは、慣習的に決まっており、町内会長が呼びかけなくても、その時期が近づけば、自然と各々が自主的に動き出すそうです。
このお話を聞いた時、これこそが理想的なまちの在り方だと思いました。前者のようなトップダウン型のコミュニティではなく、後者の乾隆学区は、町の住民一人一人が町の運営に自主的に関わる、ボトムアップ型のコミュニティなので、異なる知識、背景を持つ様々な人が町の運営に関わるため、なにか問題が起こった時でも、それに対して多様な選択肢を出すことができるでしょう。まち全体から意見を吸い上げることは難しく、時間のかかることではありますが、こうしたコミュニティは長期的な目で見ても、持続力があると思います。乾隆学区はまさにそうしたコミュニティだと思います。
魅力たっぷりで、結束力が強く、持続力のある乾隆学区から、たくさんのことを学ぶことができました。私たちもこれを機会に、自分の地域の在り方について、一度考えてみよう思います。
同志社大学政策学部 風間ゼミ 地域ビジョン班
乾隆学区民体育祭や乾隆学区でのワークショップに参加。
ワークショップでは学生ならではの意見を提案するためにプレゼンを行った。