「イライラしない子育てはテクニック。コツがあるんです」と西陣学区で「おかえり食堂」を開催し「お弁当作り」と「イライラしない子育てサロン」を開く辻真一さんと治美さん。
4人の子どもを育てる辻さんご夫妻は、2018年に児童養護施設などで生活する子どもたちを里子として養育する里親制度に登録しました。その時に、18歳を過ぎた子どもたちは原則施設を出なければならず孤立しがちだという話を聞いて、月に一度養護施設を出た子どもたちと一緒にご飯を食べることにしました。「『おかえり』と温かく家に迎えられたら」という気持ちから「おかえり食堂」と名づけました。
ところが、2020年春に新型コロナウイルス感染症が流行し、一緒に食卓を囲むことができなくなってしまいました。「なんとかつながれたら」との思いで過ごすうちにお弁当を配る団体があると知り、その団体を訪ねてやり方を教えてもらい、2021年2月から毎月2回「おかえり食堂のおかえり弁当」を配布し始めました。
この間、辻さんご夫妻は、ひとり親家庭の約半数が相対的貧困の生活水準にあることや、障害や病気のある家族のために家事を担い、十分な教育を受けられないヤングケアラーと呼ばれる子どもの存在を知ったことから、ひとり親家庭とヤングケアラー家庭を対象としました。
京都市ひとり親家庭支援センター「ゆめあす」や上京区社会福祉協議会にチラシを置いてもらい、LINEなどで登録できるようにし、口コミなどで少しずつ知ってもらえるようになると、配布するお弁当の数は20食から60食に増えました。また、活動を始めると「誰かのために何かしたい」という思いを持つ人たちと出会い、里子や大学生、親子など様々な人たちが都合のつく時にお弁当作りを手伝いに来てくれるようになりました。
2022年4月から月に一度、イライラしない子育て講座トレーナーの資格を持つ講師とともにサロンを開き、上京区民まちづくり活動支援事業に採択されました。お弁当を渡す時に、子育てと仕事に追われて心身ともに休む間がなく、イライラしがちだと悩むお母さんたちに接してきたことから、お弁当を受け取るついでに、聞いて役立つような子育てのコツを伝えたいと思ったのがきっかけです。
サロンでは、参加者が抱える子育ての戸惑いや悩みを聞きながら、毎月内容を工夫しています。
例えば、親が忙しい時に、子どもがジュースをこぼすなど、何かうまくできなかった時に怒ってしまう。「ちゃんとしなさい」「早くしなさい」「なんでできないの?」とつい言葉が出てしまう。そのような時に子どもの行為を受け止める術を知り、イライラせずに済む子どもへの言葉がけをやってみます。
また、「人はできると思っていたことができないとイライラしますが、できないと思っていたことができると『あら、できたの』となるものですよ」など、ものごとの受け止め方次第で気持ちが変わることを経験してみます。
「もちろん、話を1回聞いたからと言ってイライラしないわけではありませんが、『すぐに使ってみます』と言ってもらったり、笑顔が見られたりするのが嬉しいです。生活に必死で、子育てのヒントを得る余裕がなかったお母さんたちに、少し話を聞いていただけたらありがたいです」と辻真一さんは語ります。
夏には、西陣学区住民福祉協議会の協力を得て「もとにしツナガル食堂」を2回開きました。カレーを準備し、子どもたちが遊べる場を設けた当日、小さな赤ちゃんを育てるお父さんやお母さんが思い思いに過ごしていたり、ボランティアが心を込めて作った料理を美味しそうに頬張る人の姿がありました。大変好評だったので冬休みにも2回開催しました。
「『もとにしツナガル食堂』の今後の展望は、『地域は大きな家族』という思いで、独居、障害、介護、ケアラー、学生など地域に暮らす多様な人たちが行きたいと思えるような、子ども食堂というよりは地域食堂になったらいいなと思います。同時に、『おかえり弁当』も続けたいです。持続可能な活動にするために仲間と一緒に活動資金についても話し合い、活動しながらやり方を模索していきたいです」と辻さんご夫妻は思いを伝えられました。
おかえり食堂
LINE 公式LINE(ID) @122ymikj
TEL&FAX 075-431-1697 (辻)
亀村佳都
京都市まちづくりアドバイザー
互いに助け合える雰囲気のあるまちは素敵です。イライラしないテクニックは、子育てに限らず家族や友人とのコミュニケーションにも役立つだろうな、自分も周りも楽しい時間が過ごせるだろうな、と思いました。