私たち同志社大学政策学部一回生は、FYE(First Year Experience)という授業の一環で、2024年6月20日に京都のさまざまな時代の歴史資料を展示している京都市考古資料館を訪問し、山本雅和(やまもとまさかず)館長にお話をうかがいました。
京都市考古資料館は京都市内の遺跡を発掘調査して得られた出土品や資料を紹介することを目的に、1979年11月28日に開館しました。
建物自体は1914年に西陣織物館として西陣織を展示するために建てられました。この建物は、ドイツでモダニズム建築を学んだ本野精吾氏の設計で、壁には煉瓦を用いながらも、モダニズム建築の特徴である鉄筋コンクリートを柱と床に用いました。また、壁を平たくして装飾性やデザイン性を無くし、機能性や合理性を追求したモダニズムの精神が現わされています。やがてモダニズム建築様式の先駆的作品として評価され、京都市の有形文化財に登録されました。
西陣織物館の時は、1、2階を展示室として、3階は非公開の貴賓室として使われていました。現在、京都市考古資料館では、1階の東半分で発掘調査の結果を伝える速報展やテーマを決めた特別展示が行われ、西半分は事務室、閲覧コーナーとなっています。2階では旧石器時代から江戸時代初めまでの京都の代表的な遺跡や出土品などを年代順に1,000点以上展示されています。
今年はNHK大河ドラマ「光る君へ」が放送され、平安時代にスポットが当てられています。訪れた際は、それに合わせて、2024年2月17日から6月23日まで特別展示「紫式部の平安京-地中からのものがたり-」が行われており、山本館長に案内していただきました。
展示品の中には、当時の文化、生活、権力者の隆盛の度合いを示す証拠となるものがありました。また、紫式部が源氏物語を執筆するときにモデルとした邸宅を裏づけるものがありました。発掘された遺跡の資料からは、その構造が源氏物語に登場する建物と一致することから、著者がリアリティを追求するために実在の建造物をモデルに物語を作ったことがうかがえました。
展示されていた土器や瓦の欠片は何の変哲もないものに見えます。しかし、それらの加工方法や時期区分などを解析すると、その文化が少なくともいつ始まっていたか、持ち主がどの程度の権力を持っていたかが判断できることを教えていただきました。そして、源氏物語が書かれた当時の背景を知ることで、当時の貴族が源氏物語をどのように捉え、何を感じていたかを想像することができ、源氏物語の魅力を追求していくうえでの手がかりとなることを学びました。
展示を見て回り、京都市考古資料館ではどのくらいの資料・遺物をお持ちなのか、これらたくさんの展示物をどのように保管しているのかについて興味が湧き、山本館長に尋ねてみました。常設展示中の資料は1,000点以上あり、これだけでも特別展示が組めるそうで、他の博物館等に貸し出すことも多々ある、また、収蔵庫に保管中の資料は整理箱で22万箱以上になる、と教えていただきました。一方で、発掘調査すればまだまだ新たな資料・遺物が見つかるが、これだけたくさんの資料を持っているため、これ以上置き場所がないという悩みもあるともおっしゃっていました。そんな数多くある資料・遺物は種類によって管理方法が異なるようで、土器や石器、瓦は風化しにくいけれども、墨書土器(ぼくしょどき)は紫外線をカットする必要があり、金属類は酸化しないように注意が必要となるそうです。資料・遺物によって様々ですが、温度や湿度、空気汚染、光などに気を付けて、大事に保管されていることがうかがえました。
京都市考古資料館には、国内だけでなく海外からも多くの方が訪れるため、多言語での紹介に力を入れています。概要を示す展示パネルは日本語、英語、韓国語、中国語簡体字の4か国語で表記し、展示品の詳しい説明は、英語とローマ字表記を行っています。また、小さい子ども向けにふりがなを振っています。さらに、より詳しく時代全体を知ってほしいという思いから、8種類5カ国語(日本語、英語、韓国語、中国語簡体字、スペイン語)で解説シートを揃えています。一般的には表記されることが少ないスペイン語ですが、2016年に同志社大学で世界考古学会議が開催された際に、スペイン語を母国語とする中南米の研究者が来館される想定があり、スペイン語の解説シートを作成することになったそうです。それを機に多言語化をさらに進めるため、スペイン語が導入されました。「5カ国語によるテーマ性を持った解説シートなどを増やしていきたい」という今後の展望もうかがいました。
発掘調査や資料収集を進めること、出土した遺物と向き合う日常は、毎日が驚きで、新しい発見と出会えるのだと嬉しそうにお話されていた山本館長の姿がとても印象的でした。こうして京都の歴史や資料と向き合い、考えるということは、これまで積み上げられてきた歴史を知るということにつながり、とても大切なことだということを学ばせていただきました。
京都市考古資料館
住所:京都市上京区今出川大宮東入ル元伊佐町265番地の1
TEL:075-432-3245(代)
FAX:075-431-3307
開館時間 午前9時~午後5時 (※入館は午後4時30分まで)
休館日 月曜 (※月曜が祝日または振替休日の場合は翌日)年末年始12月28日~1月3日
入館料 無料
今回FYEで初めて取材というものをさせていただいて、はじめは不安もありましたがこのように記事にまとめることができて、自分にとって良い経験になりました。さらに、京都に来たばかりの自分には、京都の歴史に触れることができてとても新鮮でしたし、京都市考古資料館が多くの工夫によって形成されていることを知ることができました。
同志社大学政策学部一回生 静 彩希
今回、大学が在住している京都の歴史的資料について取材をしました。私にとっては、日本の歴史を知ることができる機会になり、長い間、首都であった京都のことを知ることができて貴重な経験になったと思います。そして、自分の国の言語で書いているパンフレットもあり、展示物が持っている歴史的意味についても知ることができました。
同志社大学政策学部一回生 河 在表
今回の資料館への取材を通して、京都に眠っていた歴史を再発見させてくれる考古資料館の役割はとても素晴らしいものだと感じました。文化の中心として古くから日本を動かしてきた京都の歴史を上京区から世界へ発信していると場所があると学ばせていただき、大変ありがたかったです。
同志社大学政策学部一回生 森 智哉
希少な史料から土器などの小さな史料までとてもたくさんあり驚きました。京都は貴重な史料が多く出土するため、小さくて希少ではないものは飾っていないと考えていましたが、そのような史料も大切に保管されているのが感じられました。また、特別展示は、企画が変わる度に楽しむことができるので、とても魅力的だと感じました。
同志社大学政策学部一回生 江頭 菫