10月11日から6日間にわたって開催された「第2回藤袴アベニューてらまち」。好天に恵まれた15日、主な展示会場となった寺町通に行ってきました。沿道に並べられていたのは、絶滅危惧種に指定されている「藤袴」の原種・約900鉢。万葉集に詠まれ源氏物語にも書かれた、平安時代から京都にゆかりのある花です。地元住民も観光客の方も写真をとったり花を眺めたり、楽しむ姿があちこちで見られました。
展示は通り沿いの下御霊神社や行願寺でも実施。平安時代に創建された社寺と、平安京があった頃に自生していた花との共演は、歴史ロマンにあふれる光景でした。
境内には、地元の御所南小学校の3年生が育てた花も展示。藤袴の会のメンバーだけでは、なかなか多くの藤袴を育てることが難しく、このイベント会場の近くで学ぶ地元小学生たちに協力してもらうことになったとか。栽培を通して、京都の歴史や町のことを学ぶきっかけにもなったそうです。
「旅する蝶」として知られる「アサギマダラ」が、藤袴の花の蜜を求めてやってくるということで探していたのですが、なかなか見つからず残念。アサギマダラは、渡り鳥のように国境を越えて飛来する世界で唯一の蝶でもあり、その生態に関しては謎が多く研究も盛ん。春から夏にかけて日本列島を北上、秋になると南下するため、藤袴の花が咲く頃はちょうど南下している途中で、その姿を見ようと楽しみにされている方が多いんです。行願寺におられた藤袴の会の方によると、イベント期間中は午前中や夕方など涼しい時間帯であれば見られたとのことでした。ちなみにアサギマダラは羽や胸に浅黄(あさぎ)色した斑(まだら)模様があり、これが名前の由来となっています。浅黄色とは日本の伝統的色のひとつで、青緑色のことです。
下御霊神社境内にはスタンプラリーのラリーポイントも置かれ、1冊500円で販売された専用の集印帳を片手に展示会場の社寺巡りを楽しむ方々も数多く来場。藤袴を育てている中谷千恵子さんをはじめ、関係者の皆さんがスタッフとなり、いろいろ案内をされていました。このスタンプラリーを通して、集印帳の売上が藤袴を守る活動に役立てられる仕組みとなっていて、ほかに行願寺や梨木神社、冷泉家、新島旧邸など上京区・中京区内の11カ所にラリーのポイントを設置。地元住民の方も普段なかなか入ることのない場所を訪れることができるとあって、一生懸命に足を運ばれていました。また、集印帳を購入された方には平安貴族も使っていたという藤袴の匂い袋をプレゼント。受け取られた皆さん、とても喜ばれていました。
そんなイベントが行われていた境内でお会いしたのは、このイベントを主催する「御所藤袴の会」会長の谷芳一さん。最初は藤袴という花の存在さえ知らなかったそうですが、今ではこの魅力を多くの方に広めるためにいろいろ奔走されています。「鉢植えだから、京都の町中でも育てやすい。おまけに水さえしっかりあげれば簡単に育てられる。だから、だれでも栽培できる。仮に1軒につき1鉢でも育ててもらえたら、上京区だけでいったいどれだけたくさんの藤袴が並ぶのか…直感的にこの活動は広がると思いました。」
町に活気をもたらす藤袴。たくさん花を咲かせて、平安京があった頃の風景を再現したい。そしてこの花を生かして上京区、ひいては京都市全体を盛り上げていきたい。そんな思いを抱いているそうです。1000年の時を経てよみがえる平安京の景色。その実現が楽しみです。
参考レポート
藤袴に魅了された方々にインタビュー ~原種の藤袴を守り育てる~
京都いいとこマップ編集部 渡辺
創刊12年目を迎える京都の観光情報フリーペーパー「京都いいとこマップ」(奇数月1日発行)。
そのイチ編集員が上京区のイベントや人をご紹介していきます。
公式サイト http://kyoto.graphic.co.jp/